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酒、人を呑む 「取り繕う」

人生とは、まことに、無責任なものだ。

夫が、ただの大酒飲みだと思っていた頃、
忘年会シーズンが、私の唯一の休肝日だった。

アルコール漬けの夫からの帰るコールに備えて、
焼酎の代わりに、番茶を何杯もおかわりして、
私は、夫からの呼び出しを待っていた。

車の運転は苦手だが……。
夫を無事に家に連れ戻すのが
妻の役目と思い込んでいたので、
夫が戻るまでは、晩酌はご法度を貫いていた。

夫は、私の運転技術をまるで信用していない。

しらふの私よりも、酔ってる自分の運転の方が、
はるかに安全と思っている所がある。

そんなわけで、その日も、夫は私を呼び出すことなく、
会社近くの居酒屋から自宅まで6キロ余りを、
千鳥足で何時間もかけて帰って来た。

「酔っ払ったよ~~ん、あ~~、酔っ払った~~~」
と、かなりのハイテンション。

そんなの見れば、すぐわかる。

さっさと寝てほしくて、着替えを急がせると、
服のポケットから、煙草やら財布やらを取り出しながら、
またまた、騒ぎ出した。

「あれ~~~、なんだぁ~~、これ?」

車の鍵や家の鍵など5本分が、
ひとまとめになっているキーホルダーを高くかざした。

本来の夫の鍵一式は、ズボンのポケットから出て来た。

どうやら、一緒に飲んでいた同僚の上着を着て、
夫は、帰って来たようだ。

慌てて、同僚の携帯に電話して、鍵の件を伝えるが、
ろれつが回っていない。
同じことを何度も繰り返していた。

「なんで~~~、おめぇ~の鍵が、
 俺のポケットに、入ってるんだぁ~~~。
 いらねぇ~~~のかぁ~~~」

夫が、服を着まちがえたくせに……。
さすがは、酔っ払い、いい加減だ。

この後、夫は、死んだように爆睡し、
朝の出勤時間になっても、目を覚まさなかった。

家の固定電話が鳴り響いて、
会社からの着信を知らせていたが、
私は、電話を取らなかった。

何度も掛かって来て、うるさかったので、
私は、ファックスを送信してしまった。

「夫は、ただ今、死んだように眠っております。
 三途の川原を散歩しているようですが、
 今しばらくすれば、この世に戻ると思われます。
 生き返りましたら、連絡を入れさせます。
 ご迷惑をお掛けして申し訳ありませんが、
 それまで、お待ち下さいますよう、お願い申し上げます」

私は、夫の不始末を取り繕う妻だった。
夫が飲める環境を作っていたのだった。

私も夫も、ただの酒好きだと信じていた、
あの頃が懐かしい。


飲んではいけない身体になってしまった夫にとって、
好物の酒をあきらめるのは、至難の業だ。

酒が命とばかりに、
偏ってしまった頭と体では、難しすぎる。。。。。

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非公開コメント

No title.

「酒を飲むために仕事をしている。」
と良く言います。(私も良く言います。)

しかし、その仕事に行けないとなると問題かと思われます。
その尻拭いまでさせられるとは・・・。
今なら、ありえないんでしょうけどね。

嫁。様

今、思えば、余計なお世話の数々。
夫がアルコール依存症になるよう手助けしていた!?ことに……。

なんとも、複雑な気持ちです。。。。。
プロフィール

小吉

Author:小吉
相棒の発症のおかげで、
加減して飲むことを学習。
依存症予備軍!?
猫舌の呑助です。。。。。

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