人生とは、まことに、滑稽なものだ。
夫の転勤で、広島に引っ越した。
社宅がなかったので、
会社の方で、民間のアパートを借り上げてくれた。
敷地には、2階建て4世帯用の建物が、
対面する形で、2棟建っていた。
私たち家族は、A棟の2階に入った。
台所の脇の窓からは、
入居者用の駐車スペースが見下ろせた。
当時、中学2年の息子と小学5年の娘は、
朝、玄関を出た父親が車に乗り込むのを、
その高窓から眺めて、「いってらっしゃ~い」
と、手を振るのが日課だった。
夜は、車のヘッドライトで、高窓が照らされると、
「パパが帰って来た!!」と言って、
やはり、窓から顔を出して、手を振るのであった。
子どもたちにつられて、私も窓を見る癖がついていて……。
その日の朝は、日曜日だった。
休日なので、家族は皆、朝寝坊していた。
何気なく、カーテンを開け、駐車場の方に目を向け、
その異様な光景に驚くと同時に、吹き出してしまった。
夫の車の隣に駐車している車のすぐ脇に、
黒い革靴が片方転がっていて、その先に、もう片方が……。
また、その先には、靴下やネクタイが散らかり、
またまた、その先には、背広、ズボンが脱ぎ捨ててあった。
車の持ち主は、対面するB棟に住む、
30代半ばのご主人で、
彼の住まいの方向に、落し物が点々と続いていた。
相当、酔っ払っていたようだ。
彼には、車のドアが家のドアに思えたのだろう。
起きて来た夫に、その光景を見せると、
「酒に酔っても、俺は、あんな無様な事はしない」
夫は、勝ち誇ったような言い方をしていた。
お昼近くになって、
落し物に気付いた奥さんが、慌てて拾い集めていた。
飲酒運転の罰則が今ほど厳しくなかった時代、
危険運転を憂うより先に、
お粗末な醜態を笑ってしまったが……。
事故もなく、帰り着いたから良かったものの、
運転者のモラルのなさは、言語道断だ。
このご主人、酒に呑まれていたようで……。
ある日の深夜、我が家の玄関ドアを開けたくて、
ドアノブを引っ張ったり叩いたりと、物騒な音を出してくれた。
同じような造りの建物だったので、
うっかり自分の家と間違えたようだが……。
そうとは知らず、
真夜中、玄関前に不審者が……で、
こちらは、飛び起き、緊張が走ったのだ。
息子のバットを握りしめた夫が玄関ドアを開け、
「何してるんだ!!」と怒鳴りつけると、
ろれつの回らない赤ら顔のご主人が、戸惑っていた。
まったく、人騒がせな酔っ払いだ。
あのご主人は、大丈夫なのだろうか。
同じ酒飲みでも、自分の方がまともと言っていた夫は、
その後、横浜に戻り、アルコール依存症の診断を受けた。
私の知っている失態の数々、
知らない失態の数々を重ねて、
夫は、心まで酒に呑まれてしまった。。。。。。
夫の転勤で、広島に引っ越した。
社宅がなかったので、
会社の方で、民間のアパートを借り上げてくれた。
敷地には、2階建て4世帯用の建物が、
対面する形で、2棟建っていた。
私たち家族は、A棟の2階に入った。
台所の脇の窓からは、
入居者用の駐車スペースが見下ろせた。
当時、中学2年の息子と小学5年の娘は、
朝、玄関を出た父親が車に乗り込むのを、
その高窓から眺めて、「いってらっしゃ~い」
と、手を振るのが日課だった。
夜は、車のヘッドライトで、高窓が照らされると、
「パパが帰って来た!!」と言って、
やはり、窓から顔を出して、手を振るのであった。
子どもたちにつられて、私も窓を見る癖がついていて……。
その日の朝は、日曜日だった。
休日なので、家族は皆、朝寝坊していた。
何気なく、カーテンを開け、駐車場の方に目を向け、
その異様な光景に驚くと同時に、吹き出してしまった。
夫の車の隣に駐車している車のすぐ脇に、
黒い革靴が片方転がっていて、その先に、もう片方が……。
また、その先には、靴下やネクタイが散らかり、
またまた、その先には、背広、ズボンが脱ぎ捨ててあった。
車の持ち主は、対面するB棟に住む、
30代半ばのご主人で、
彼の住まいの方向に、落し物が点々と続いていた。
相当、酔っ払っていたようだ。
彼には、車のドアが家のドアに思えたのだろう。
起きて来た夫に、その光景を見せると、
「酒に酔っても、俺は、あんな無様な事はしない」
夫は、勝ち誇ったような言い方をしていた。
お昼近くになって、
落し物に気付いた奥さんが、慌てて拾い集めていた。
飲酒運転の罰則が今ほど厳しくなかった時代、
危険運転を憂うより先に、
お粗末な醜態を笑ってしまったが……。
事故もなく、帰り着いたから良かったものの、
運転者のモラルのなさは、言語道断だ。
このご主人、酒に呑まれていたようで……。
ある日の深夜、我が家の玄関ドアを開けたくて、
ドアノブを引っ張ったり叩いたりと、物騒な音を出してくれた。
同じような造りの建物だったので、
うっかり自分の家と間違えたようだが……。
そうとは知らず、
真夜中、玄関前に不審者が……で、
こちらは、飛び起き、緊張が走ったのだ。
息子のバットを握りしめた夫が玄関ドアを開け、
「何してるんだ!!」と怒鳴りつけると、
ろれつの回らない赤ら顔のご主人が、戸惑っていた。
まったく、人騒がせな酔っ払いだ。
あのご主人は、大丈夫なのだろうか。
同じ酒飲みでも、自分の方がまともと言っていた夫は、
その後、横浜に戻り、アルコール依存症の診断を受けた。
私の知っている失態の数々、
知らない失態の数々を重ねて、
夫は、心まで酒に呑まれてしまった。。。。。。