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酒、人を呑む 「愚の骨頂」

人生とは、まことに、軽率なものだ。

「うちのカミさんは、大酒飲み!!」

新婚の頃、夫は、会社の先輩との酒席で、
私のことを誇大に触れ回っていたようで……。

大酒飲みの後輩が一目置く、
大酒飲みの奥さんとやらに
会いたくなってしまった先輩から、

「ぜひ、奥さんも、ご一緒に」と、お誘いが……。

先輩のおごりということで、
二つ返事で、待ち合わせの新宿の居酒屋へ……。

呑兵衛の夫には及ばないが、
酒豪の父のDNAを引き継いだ私は、いけるくちだ。

どんなに、飲んでも吐かない、
きれいな飲みっぷりが、私の自慢だ。

ただ、必要以上に、笑い過ぎるので、
それが、騒がしいと指摘されることは、たびたび。

とにかく、振る舞い酒を飲み放題で、
何軒か、はしごして……。
3人は、深夜の新宿の路上に躍り出た。

前方から、千鳥足のおじさんが、
右に左に大きく歩きながら、近付いて来た。

擦れ違いざま、そのおじさんはバランスを崩し、
夫にぶつかってきた。

「なんだ、バカヤロー!! どけ!! 邪魔だ!!」

謝るべき立場のおじさんが、怒鳴り出すと、
ほろ酔い加減だった夫の顔色が、変わった。

夫は、おじさんの胸ぐらをつかんでいた。
おじさんも負けていない。
わめきながら、拳を振り上げ、殴りかかって来た。

酔っぱらいの喧嘩に、野次馬が集まり始めた時、
先輩が叫んだ。
「逃げろ!! 早く!!」

私は、夢中で走った。
そして、迷子になった。

夫や先輩の姿が、見当たらない。

真夜中の路地裏に、
うら若き女が一人、取り残されてしまった。

携帯電話もない時代、
待っていても、事態は進展しない。

終電は、とっくに走り去っていた。
家に帰りたい一心で、タクシーに飛び乗った。

一足遅れて、夫もタクシーで帰宅。
お互いの無事を分かち合いながらも、
なぜか、腑に落ちない。

当時、私のタクシー代が7000円ちょっと。

「高いなぁ~、遠回りされたな。
 俺は近道を指示したから、
 6000円でお釣りがきた!」

夫は自慢げに語るが、やはり、腑に落ちない。

同じ場所(新宿)にいて、同じ家に戻るのに、
別々のタクシーを利用するのは、愚の骨頂。

「なんで、私の手を引いて、逃げなかったのよ!」

「ちゃんと、ついてくると思ったんだ! 
 まさか、反対方向に思いっ切り駆け出すとは……」

私たち夫婦に、あうんの呼吸はない。
この人とのこの先、大丈夫なのだろうか???

若干の不安を感じたが、
もはや、アルコール漬けの頭、熟考は苦手になっていた。

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小吉

Author:小吉
相棒の発症のおかげで、
加減して飲むことを学習。
依存症予備軍!?
猫舌の呑助です。。。。。

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