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酒、人を呑む 「似た者同士」

人生とは、まことに、因果なものだ。

彼に連れられ、
彼の両親のもとを初めて訪ねた。

2泊目の夜だった。

酔いが回った私は、
一足先に2階の寝室に移動した。

なにやら、階下が騒がしい。
言い争うような声が漏れ聞こえて来たが、
そのうち収まるだろうと、楽観していた。

「さっさと、出ていけぇーーーー!!
 今すぐ、出ていけぇーーーーー!!」

お義父さんの酔いどれ声と同時に、
物凄い勢いで、彼が階段を駆け上がって来た。

「帰るぞ!!」

彼に、たたき起され、
慌てて荷物をまとめ、外へ出た。

その場に居合わせた母親も姉たちも、
親子喧嘩の仲裁は出来なかった。

父親が暴れ出したら、誰も止められないのだ。

ど田舎の夜空の下、放り出されて……。
寒さと心細さで震えながら、暗闇を歩き、国道に出た。

走るタクシーに手を振っても無視され続け、
1時間くらい経った頃、1台のタクシーが停まってくれた。

「取り合えず、今からでも泊まれる所へ行って下さい」

彼がお願いすると、運転手さんは考え込んでしまった。

「この時間では、旅館は無理だし……。
 泊る所って言われてもねぇ~。 困ったなぁ~」

タクシーは、私たちを山奥のラブホテルに運んだ。

「ごめんね。あんな親とは、絶縁するから!!」

除夜の鐘が、
彼の決意を応援するかのように、響き渡っていた。

喧嘩の原因を尋ねても、
彼も酔っていて、よく覚えていないのだ。

いきなり、父親が切れて、暴言を吐いたので、
売り言葉に買い言葉で、エスカレートしたらしい。

私と飲んでいた時は、あんなに上機嫌だったのに……。
いったい、何がどうなっているのやら???

大晦日に、彼の実家から追い出され、
うらぶれたホテルで、新年を迎える結末。

あの時は、恨んだ。
お義父さんを人で無しと非難した。
酒癖の悪い、最低最悪の父親だ。

彼の生い立ちが偲ばれて、胸が一杯になった。

私たちが惹かれあったのは、似たような父を持つ、
似た者同士だったからなのかもしれない。

「お酒さえ、飲まなければ、
 いい人なんだけどねぇ~。 お酒さえ……」

お義父さんを知る人は、口々に声を揃える。
暴飲は、人間関係を壊す。

「お酒さえ、飲まなければ……」

酒に目が無い彼も、然り……。 
のちのち、暴飲で体を壊すことに……。

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非公開コメント

No title.

私もれっきとしたアルコール依存症ですが、身に詰まされます。
最初の一杯を飲むと、お話のようになるのでしょう。

No title.

何が起きたのか??心配しておりましたが、
やっぱり・・・。
っていうのが感想です(涙)

「お酒さえ、飲まなければ、
 いい人なんだけどねぇ~。お酒さえ……」

よく耳にする言葉ですよね。


yamadagaga様

コメント、ありがとうございます。

当時、アルコール依存症という病気を理解していたら、
お義父さんへの接し方も違っていたと思います。

夫も私も、あの頃のお義父さんお義母さんと同じ年齢になり、
いろいろ考えさせられます。。。。。

嫁。様

「やっぱり・・・」 なんです。

大量のアルコールが、思考回路を破壊して、
喧嘩別れです。。。。。

のちに、夫もアル中になるとは……。
血筋なのでしょう。

お酒を飲んでもいい人でいて欲しいものですね。
プロフィール

小吉

Author:小吉
相棒の発症のおかげで、
加減して飲むことを学習。
依存症予備軍!?
猫舌の呑助です。。。。。

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