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酒、人を呑む 「親不孝」

人生とは、まことに、微妙なものだ。

無愛想で、威張っていて、時には暴力も……。
殴られる理由が分からない。
八つ当たりとしか、思えなかった。
そんな、飲んだくれの父親が嫌いだった。

「早く、死ねばいいのに……」
子どもの頃、いつも、布団の中で念じていた。

私が高校3年に進級した4月、父が入院した。
病名は胃がんだった。

「手術をしても、がん細胞は取り切れないので……。
 このまま手術はしない方がいいように思われますが…」

医者の説明を受けた親戚たちは、
がん細胞を少しでも取り除いてほしいと手術を強く希望。
胃潰瘍の悪化と聞かされていた父も手術に同意したので、
開腹したが、想像以上に癌は広がっていた。
手の施しようがないので、すぐに縫合し、手術は終了。

余命半年が、医者の見解だった。

5月、中間試験初日の教室、
問題を解いている最中の私は、担任教師に呼び出された。
父の急変を受けて病院に向かったが、間に合わなかった。

術後1週間足らずで、父は逝ってしまった。
まだ、43歳だった。

火葬場で、父の親兄弟達が、
骨になった父に酒をかけていた。

生前も酒まみれだったが、
死んでからも、浴びるほど酒をかけられて、
果たして、父は満足だったのだろうか。

「早く、死ねばいいのに……」
願いは叶ったはずなのに、心は重かった。

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No title.

43歳・・・。
お若いですね。

術後、わずか1週間で他界されたお父様は
生前とは違って、病を患ってからは、
家族の手を煩わすことなく永眠されたんだ。

失礼ですが、そんな風に思ってしまいました。
長い年月を経て、小吉様の心の変化、感じました。

生意気ですみません。

嫁。様

元気な時は、家族をいっぱい振り回したけど、
最期は、あっけないくらい早くて……。

これで、人生の帳尻が合うんだなぁと、
気付かされました。
プロフィール

小吉

Author:小吉
相棒の発症のおかげで、
加減して飲むことを学習。
依存症予備軍!?
猫舌の呑助です。。。。。

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