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背中合わせ

夫が入院する朝、私は娘からの手紙を預かっていた。

「病室に入ったら、パパに渡してね」

…………入院で、パパだけが、
大変な思いをするのは、かわいそうだから、
パパが戻るまでは、大好きなお菓子を我慢する。
元気になって、早く帰って来て……………

そんな内容の手紙だった。

私は酒断ち、娘は菓子断ちで、願掛けしたのだ。

夫は、入院記録用の大学ノートの表紙に、
娘の手紙を貼り付けて、
2ヵ月程の入院生活を無事終了したのだった。

「お帰りなさい。 退院おめでとう!!」

夕食には、娘の手料理が並んだ。
乾杯で、手にしたグラスの中身は、ウーロン茶。

いささか、盛り上がりに欠けるが、
夫の病状を思えば、アルコールは御法度だ。

退院後の自宅療養中、
夫は、自身のルーツを求めて、一人旅に出た。

横浜の自宅から、車を走らせ、
熊本にある、廃屋の生家へ……。

1週間の長旅。

これから、どう生きるのか。
覚悟を決めるために、必要な時間だったに違いない。

酒を飲むことが、生活の一部だった夫が、
「酒を断つ」という、現実を受け入れなければならないのだ。

アルコールが身近に氾濫する中で、
飲まずに生きる道を選ぶのは、至難の業だ。

夫は、断酒後、お菓子類の食べ方が半端ない。
今まで、苦手としていたケーキや、和菓子など、
甘いものもパクパク食べて……。

食の好みが、180度、変わってしまったような。。。。

父親の退院で、お菓子解禁になった娘と、
競うように、お菓子の食べ比べをしている。

飲めない寂しさを、
大量のお菓子で紛らしているようにも、見て取れる。

飲みたいのを我慢し続ける日々を送っていれば、
いつか、我慢の限界が来てしまう。
夫は、再発の影と背中合わせだった。。。。。

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小吉

Author:小吉
相棒の発症のおかげで、
加減して飲むことを学習。
依存症予備軍!?
猫舌の呑助です。。。。。

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