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道連れ

問題行動を起こし、反省室で過ごした夫は、
主治医の配慮で、かろうじて強制退院は免れた。

病棟の出入口が施錠されている、
半開放病棟へ転棟することで、入院は続行された。

重症である印の赤バッチを胸に付けた夫は、
外泊訓練は禁止で、散歩も売店に行くのも、
看護師同伴でないと許可が下りない。

看護師は常に忙しくしているので、
夫は自分の都合を言い出せず、
じっと病室に籠っているという。

「何も出来ない。退屈だ。家に帰りたい」

行動の自由を制限された夫は、ぼやいていた。

「何もしないで、静かに過ごすことが、
 今のパパに一番必要な治療なんだと思うよ。
 癌を退治したばかりだし……。
 ゆっくり身体を休ませてあげようね」

夫の身体を気遣いながら、
実の所、自分がゆっくり身体を休めていた。

私は、穏やかな一人暮らしを謳歌していたが、
夫は、飲みたくて飲みたくて仕方がなかったのだろう。

夫を見舞い、病室のテーブルの隅に置いてある
ノート型のカレンダーを見て、思わず絶句した。

日々のメモ書き用スペースは、もれなく、
「のまない」という文字の繰り返しで埋まっていた。

そして、退院予定日を境に、
「のまない」の記載はなくなり、空欄に……。

退院したら、飲むつもりなのだろう。。。。。

007.jpg

私の予想を裏切ることなく、
夫は退院後、すぐに飲酒再開した。
入院前と同じように、自室でこっそり飲んでいる。
足掛け5か月に及ぶ入院生活は、何だったんだろう。

アルコール依存症についての書物や家族会で、
夫の回復をイメージし、モチベーションを上げて来たが……。

執拗なまでに酒に執着する夫は、
酒に呑まれて人生を終える道を突き進む覚悟らしい。

その道連れが私だ。

「もう、別れた方がいいかも。
 何回も入退院を繰り返しても、
 パパはお酒を止めないし……。
 結局、ママよりもお酒の方が大事ってことでしょ。
 これ以上、ママがつらい思いをしないよう、
 距離を置いた方がいい」

娘の口から出た言葉に、「潮時かな」と思いながらも、
踏ん切りがつかない。。。。。。

人間の体には、自然治癒力が備わっているはず。
立ち直りたい、回復したいという心が、
きっと、夫にもあるはずだ。

まだまだ、可能性を捨て切れずにいる。


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ゆ…様

コメント、ありがとうございます。

兆しの見えない小康状態の中で、
「諦めない。時を待つ」ことを
もう終わりにしたい私がおりました。

最近は、夫に言いたいことがあっても、
衝突が面倒で、見て見ぬ振りをして来ました。
「必要な手続き」からも、「伝える努力」からも、
逃げておりました。

心丈夫になれるお言葉の数々、
本当にありがとうございます。
お陰様で、まだ踏ん張って行けそうな、
前向きな気持ちになれました。

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ゆ…様

いつもいつも、私の心を落ち着かせて下さる温かなお心遣いに、
ただただ、感謝しております。

最近、夫に失望する出来事があり、
病気とはいえ、こんな男だったのかと情けなくなりました。

「思考を離す」は、救われるお言葉です。

夫への失望は、後日、記したいと思います。
今は渦中で、
感情的になってしまって、上手く表現できません。。。。

心身の健康度が急降下していることを気付かせて頂き、
本当にありがとうございます。


ゲ…様

「後味が悪い」
今の私は、まさに、その一言に尽きるのです。

離れたい気持ちもあるのに、離れるのが怖いのです。
どっぷり、共依存に浸かっております。。。。。

同県だったのですね。
お側から励みを頂けて、とても嬉しく思っています。
ありがとうございます。

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ゆ…様

「どれをとっても無責任」が、また、露出しました。

夫の言動が理不尽に思えてしまうのは、
病人相手に、私が過剰に反応し過ぎているから???
頭の中は混乱しています。。。。。

今、私が健康じゃないことだけは、確かです。

いつも、お心にかけて下さり、本当にありがとうございます。
プロフィール

小吉

Author:小吉
相棒の発症のおかげで、
加減して飲むことを学習。
依存症予備軍!?
猫舌の呑助です。。。。。

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