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悪態

5泊6日の入院で、がんセンターを退院。
すこぶる順調な回復と言える。

退院した日は、自宅で過ごし、
翌朝、元の病院に再入院することになっていた。

束の間の自宅滞在。
自室にいる時も出た時も、ほんの少しの間でも、
夫は部屋の出入り口の引き戸を閉め切っていた。
それは、私の目を遮断するかのような徹底ぶりだった。

でも、引き戸の開閉時に、薄っすらと煙草臭が届き、
夫の自室での様子が何となく想像できた。

喫煙は飲酒を誘発する。
飲まずにいられるのだろうか。

「また入院、やだなぁ~」
「そうだねぇ~」
「面倒くせぇなぁ~」
「そうだねぇ~」
「行きたくねぇなぁ~」
「そうだねぇ~」

ゆるく同調するだけの私の答え方に、
今は入院以外に道はないと観念したようで……。

翌朝、夫は渋ることなく、病棟に戻って行った。
入院生活の中で、飲まない日を積み上げて行く。

がん治療は一段落したのだ。
今度は、アルコール治療の番だ。

入院はあと1か月半ほどなので、
何とか無事に乗り切ってくれるだろう。
漠然とそう信じている自分がいた。

夫の病状を甘く見ていた私は、
本当にお目出たい人間としか言いようがない。

土曜の夜10時近く、
入院先の当直医から電話がかかって来た。

再入院から2週間足らずで、
夫はまたしても、やらかしてくれた。

夜8時過ぎ、病室を抜け出し、
酒屋の自販機で酒を買い、飲んで来たらしい。

9時頃戻った夫は、病室のベッドに腰掛け、
平然と煙草をふかしていたそうだ。
病院敷地内は全面禁煙なのだ。

看護師が問い掛けても無視。
当直医にも黙秘。

夫は鍵のかかる反省室に入れられた。
月曜日に主治医が面談し、
今後のことを決めるから……と、
一方的に伝えられ、電話は終わった。

当直医の険しい話し方からも、
病室での夫の悪態が想像できた。

再入院後、急激に物忘れが多くなった夫は、
言動もかなりおかしかったようで、
要注意人物になっていたのだ。

「強制退院」というワードが
すぐに浮かび、私は絶望した。

また、飲んだくれの日々が始まる。
回復は完全になくなった。
またまた、奈落の底に落とされた。

壊れたままの夫と一緒に暮らせるのだろうか。
裏切られた感が込み上げる私が、
夫を支援することなど出来るのだろうか。。。。

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ゲ…様

いつも、お心遣い、ありがとうございます。

夫の物忘れや記憶が消えることへの不安を看護師にこぼすと、
今まで大量の飲酒をしていた人が、お酒を断つと、
認知症のような症状が出ることが多く、
おかしな行動をすることがあると言っていました。
どうやら、夫の奇行は一時的なものらしいのです。

ゲ…様の予想は、当たっているような気がします。
「…たぶん死ぬまで酒で裏切り続ける…」
夫は、その路線を走り続けております。
今回の入院も、断酒へとは繋がりませんでした。。。。
プロフィール

小吉

Author:小吉
相棒の発症のおかげで、
加減して飲むことを学習。
依存症予備軍!?
猫舌の呑助です。。。。。

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