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想定内

家の近くには小さな公園がある。
夫は、木陰のベンチにちょこんと腰かけていた。

買い物帰りに偶然、夫の姿を見つけたが、
気付かぬ振りをして、通り越した。

声を掛けるには、気まず過ぎる。
夫は、缶酎ハイを飲んでいる最中だったのだ。

こうして昼間から飲んでいるのだから、
もちろん、家でもこそこそ飲んでいるのだろう。

断酒はあえなく終了。

想定内のことだから、驚かないけど、
がっかり感は込み上げる。

以前のような暴言、奇行がないだけ、
マシと思うようにしている。

P1060714.jpg

大きなお腹を抱えて、娘は産休に入った。
あと、2か月足らずで、赤ちゃんに会える。

思い出すのは、2013年9月の結婚披露宴。
その終盤、娘は両親への手紙を、
涙で声を詰まらせながら読み上げたのだ。

「…パパは、私が世界で一番好きな人だよ。
 すごく、すごく大切に思っています。……」

入院中の夫は、外泊許可を得て、参列していた。

「…子ども好きなパパに、私が産んだ、
 とびきり可愛い孫の姿を見せたいです。
 私にしてくれたのと同じように、
 たくさん可愛がってほしいです。
 だから、絶対に長生きして下さい。……」

娘から、世界一の称号を頂いた夫は、
私の隣で、うつむいたまま、
頻繁に鼻をすすり、目頭を押さえていた。

娘の願いを叶えるためにも、
酒と縁を切って欲しい。
娘思いの夫なら、きっと出来る。
家族は夫の断酒を当然の事と思っていた。

でも、退院後、夫はいとも簡単に飲み出した。
すぐに、歯止めが掛からなくなり、荒れた。
その後は、入退院を繰り返すばかり……。

アルコール依存症という自覚はあるのに、
酒を止められない。
自覚だけでは、歯止めにならない。。。。

中途半端な治療があだになっているのかもしれない。

でも、生きていれば、回復のチャンスはある。
生きていれば、人生を仕切り直せる。

夫が生きていることだけに目を向けて、
良しと思うようにしよう。

もうすぐ、とびきり可愛い孫に会える。

飲酒を制御できない身体で、
節酒の路線を模索している夫。

因果な病気に翻弄されながらも、
夫なりに頑張っているのだろう。

失敗の繰り返しが、やがては、
失敗を乗り越える大きな力になると信じたい。

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よ…様

初孫の誕生が、回復のきっかけになればと
淡い期待もあるのですが、
なにしろ、難儀な病なので、
急いてはいけないと自分に言い聞かせています。

いつも、お心にかけて下さり、
本当にありがとうございます。

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Y様

夫は、お酒ナシの生き方は出来ないようで……。
命を削りながら、飲酒しています。

病院に繋がっても、断酒へとは繋がりません。
膠着状態が歯痒くもあり、私の気分はふさぎがちに……。

「…どんなに周りが期待をしても、
 本人が回復せざるを得ないと思うまで何も始まらない病気…」

この病気のあるべき姿を再確認させて頂きました。

いつも案じて下さり、ありがとうございます。
Y様のお言葉に元気を頂いております。
本当にありがとうございます。
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小吉

Author:小吉
相棒の発症のおかげで、
加減して飲むことを学習。
依存症予備軍!?
猫舌の呑助です。。。。。

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