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驚きと予感

外来診察の予約日までは、
市販の胃腸薬で誤魔化しながら、夫は耐えていた。

学生時代、夫はキックボクシング部に所属していた。
試合前は、減量で自身の身体を追い込むこと多々。
夫は苦痛に耐えることに長けているのかもしれない。

診察予定日になり、私たちは病院へ出向いた。

「肝機能の数値が高いですね。
 飲んでますか?」

医師は、夫の飲酒を前提に話し始めた。

「実は、腹の調子が悪くて……。
 ひどい下痢が治まったら、
 今度は、腹が張って重苦しくて……。
 今、酒は飲んでません」

夫はこっそり断酒していたのだ。
節酒しているようには見えたが、
全く飲んでいなかったとは……。
うれしい驚きだった。

医師も意外に思えたようで、身を乗り出して来た。

「それは、それは、素晴らしい。
 何日位になりますか?」

「今日で、1週間です」

「そうですか。腹痛がきっかけでも、
 断酒出来たことは良い事ですね。
 この調子で、断酒が続けば、
 肝機能の数値も落ち着いて来るでしょう。
 飲まない日を更新していきましょう」

「はい」

晴れ晴れとした顔色の夫を見て、
私も誇らしい気持ちになっていた。

このまま、断酒の波に乗ってくれたら、
どんなにか幸せだろう。



モビール

その晩、夫に思いを伝えた。

「病院で言ってたでしょ。 飲んでないって。
 それ聞いて、すごくうれしかった!!
 ホントにホントに、うれしかった!!
 ひとりで頑張ってたんだね、スゴイなぁ」

夫は、照れ臭そうにしていた。
ほんのりとした幸せを感じながらも、
心の片隅に一抹の不安がよぎる。

酒を控えるほどになっていた腹の不調は、
医師の説明では、

「ひどい下痢が続いたのはアルコールのせい。
 そのアルコールを止めたので、
 今度は腹が張ってガスが貯まるようになっただけ。
 整腸剤で様子を見ましょう。
 断酒していれば、良くなります」との事。

腹の不調をただ事じゃないと思っていた夫は、
大したことじゃなかったと一安心してしまっている。

この流れだと、
加減して飲み始めるような予感がする。
ずっと側で夫を見て来た私。
悪い予感に関しては、百発百中の腕前だ。

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よ…様

毎度毎度の糠喜びで、用心深くなってしまいました。
心配の先取りは、苦しみを大きくするだけですものね。

「今は今をそのまま受け取って……」
大切な心掛けをありがとうございます。
気持ちは、前向きでありたいと思いました。

お気遣い下さり、本当にありがとうございます。

空…様

コメント、ありがとうございます。
私の息子と年が近いようですね♪

若いあなたが、
大量飲酒生活から抜け出せたこと、
「転機」を大変うれしく思います。

母親目線になってしまいました(^^)

私の夫にも「転機」が訪れるかもしれない。
そんな嬉しい希望を頂きました。
ありがとうございます。

今の幸せがずっと続きますよう、
これからも穏やかな日々でありますよう、
陰ながらお祈り申し上げます。
プロフィール

小吉

Author:小吉
相棒の発症のおかげで、
加減して飲むことを学習。
依存症予備軍!?
猫舌の呑助です。。。。。

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