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持ち越し

節酒(?)を試みての1週間が過ぎた。

診察予約日になり、
同行しようとする私に、
また、夫が同じことを言った。

「一人で行ける」

私がいては気まずいのだろう。
医師と私がスクラムを組んだら、
入院に拍車が掛かってしまう。

夫は、入院したくないのだ。
飲みながらの小康状態を望んでいるようだが、
飲んでいれば、悪くなるばかりだ。

肝硬変、糖尿病を併発している夫の体には、
医療が必要なのだ。

二人で、再び、病院へ。
当日の血液検査の結果にも、
飲酒の影響は色濃く出ていた。

「もう、ご自分でお酒を止められる
 レベルではないと思いますよ。
 Mさんの場合は、アルコール依存症だけでなく、
 肝硬変や糖尿病もありますから……。
 この状態で飲み続けることは、大変危険です。
 このままなら、死んでしまいますよ」

「………」

夫は、首をうなだれたまま顔を上げない。

「Mさんは、まだ入院しなくて大丈夫と
 考えているようですが……。
 自力で頑張り続けても、無理と判断する時期、
 限界ラインをどのあたりと決めていますか?」

「………」

「入院すれば、体は確実に回復します。
 まだ、54歳とお若いのだから、
 断酒すれば、20年以上は生きられますよ。
 入院して治療してみませんか?」

「……はい……でも、
 入院しても、ムダ……退院したら……
 また、飲み出すに決まってるから……ムダ」

立て続けに3回も入退院を繰り返し、
断酒に失敗しているのだから、
臆病になるのはもっともだと思う。

でも、また、チャレンジしてもらいたい。
同じことの繰り返しに見えるかもしれないけど、
現実には、全て同じことなんて起きない。

取り巻く環境は、日々変わっているのだ。
今までうまくいかなくても、
今度は、うまくいくかもしれない。


夫と主治医の話が堂々巡りの中、
私は、自分の思いを口にした。

「あの~実は、今年の夏、
 娘が赤ちゃんを産む予定なんです。
 私たちの初孫になるんです。
 夫と一緒に初孫の誕生を祝いたいのです。
 だから、夫には生きててもらいたいのです。
 今の夫の病状に一番ふさわしい治療を
 どうぞ、よろしくお願いします」

診察中に、家庭の事情を持ち出してしまった。
夫の中の立ち直りたい、回復したいという心が、
少しでも、目覚めてくれたら……。
切羽詰まった稚拙な考えだった。

「私は、患者さんに入院を勧めない医者で
 通っていますが……。
 今のMさんには、入院治療が必要だと思います。
 私の言っている意味がお分かりになりますよね。
 受診はあまり間を開けない方がいいでしょう。
 また、来週いらして下さい」

「毎週は、ちょっと、キツイ…です」

「それでは、2週間後に予約を入れましょう。
 でも、具合が悪ければ、いつでも来て下さい」

主治医は、夫の出方を辛抱強く待っていてくれる。
回復への一歩は、また持ち越しになった。

夫のかたくなな心が変わることはないのだろうか。

生きててもらいたい。。。。。
思いは、なぜ伝わらないのだろう。

『断酒には作戦が必要。
 家族が適切なやり方を取ることで、
 本人に伝わるものがある』

得た知識は活かされず、
私は、空回りしている。。。。。。

家族や医者に、長生きせよ、
治療せよと勧められ、それが重荷と感じて、
自分の余命くらい自分で好きにしたいと
夫は思っているのかもしれない。

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内緒様

「…私たちの心の叫びは伝わない……多分1%も伝わらない…」

本当に、次から次へと、
夫は私をガッカリさせてくれます。

私のやっていることが、良い結果に繋がらない。。。。
こうして、心は壊れていくんだなぁと、
最近とみに感じております。

G様、くれぐれも御身お大切にお過し下さいますよう、
お祈り申し上げます。

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R様

今の所、通院が続いているので、
様子を見ておりますが……。
行き詰まり感もありますので、
変え時のような気も致します。

ご心配いただき、ありがとうございます。

G様

夢のまた夢ですが、
そのような未来があったらいいなと思います。

頑張らないことを決めたG様は、正直でお強い方だと思います。
私は執念深いだけの愚か者です。
やっていることの数々、やらないでいることの数々、
NGの見本市です。。。。。

もうこれ以上、依存症者に囚われることのないよう、
G様の幸せを祈らずにはいられません。

お久しぶりです

いつも小吉さまのブログを読ませていただくと、私の義弟とご主人

がだぶります。まず絶対に人の言うことはきかなかった、自分の

思うままの飲酒で糖尿の診察3日前くらいからお酒を控えていた。

そこのところは考えて、あまりに数字が悪いと入院になると困るから

だと思います。お酒に牛耳られての一生でしたね。

小吉さまはどうにかしたいと思っていらっしゃるでしょうが、

どうもご主人は人の意見は聞くかたではないと勝手に思ってしまい

ます。ご主人の好きなように、小吉さまはただ見守るだけでもいいか

なと。うちの夫は認知症になって3年ほどでお酒を飲まなくなり

ました。おいしくなくなったそうです。昔からお酒を飲み過ぎて

よく記憶を失くしていたので認知症の原因の一つだと思ってます。

お酒は怖いですね。そばでみているのも辛いですが、私の場合は

もう介護に入ってますので覚悟の上でいたってたんたんとしています

ましてお酒を飲まなくなったので猫のようにおとなしいです。

小吉さま、どーんとしていましょうよ。しかたないこといっぱいあり

の人生ですよ。ごめんなさい勝手なことばかり言って

きばなコスモス 様

「お酒に牛耳られての一生」の終盤に入っております。
逆転劇を観たいものですが、叶わぬ夢かもしれません。。。。

うちの夫も病気の進行で、出来ないことが多くなり、
介護の域に入っており……。
私は夫の日常を見守っている状態です。

「どーんとしていましょうよ」は、うれしいお言葉です。
おろおろしてたら、不安が大きくなるだけですものね。
温かいお心遣い、本当にありがとうございます。

きばなコスモス様と旦那様が、ずっと穏やかに過ごせますよう、
陰ながら、お二人のお幸せを祈っております。
プロフィール

小吉

Author:小吉
相棒の発症のおかげで、
加減して飲むことを学習。
依存症予備軍!?
猫舌の呑助です。。。。。

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