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逃げ場

ボケ防止にと短時間の仕事に就いて、
10年が過ぎた。

夫が会社に行けなくなり、
家でごろごろ状態になってからは、
自分に仕事場があることが救いになった。

家を空けれる時間が規則正しくやって来る。
仕事場が、私と夫を引き離してくれる。

勤務先の施設には、老若男女が集う。
来館者は皆さん、明るく元気いっぱいだ。
達者だから、館にやって来れるのだけど……。

ふと、思ってしまう。
この人たちにも、悩みや不満はあるはず。

ここに集い、趣味や運動での交流が、
ストレス解消になっているのだろう。

趣味を持たない夫は、仕事一途だった。
酒に癒しを求めて、
度を超えた飲酒で依存症になってしまった。

飲んでも地獄、飲まなくても地獄の
苦しみの中を夫は漂っている。

この不幸な状況を変える力は、
もはや、自分たちにはないと思えてしまう、
夫の奇行の数々と入退院の繰り返し。

わかってもらえないだろうけど、
言わずにはいられない。

そんな思いがあったので、
夫の姉宛てに品物を送った時、
添えた手紙に、夫の状態と私の戸惑いを
少しだけ書いてしまった。

遠方で、会うこともままならない義姉にも、
弟のその後を知ってもらいたかった。

後日、義姉から葉書が届いた。

「…そちらは、お変わりない様子で何よりです。
 少々の不満は誰しもあるもの。
 “人は不自由の中で生きていくもの”
 と、 割り切って生きていきましょう……」

生き方を正されてしまった。。。。。。

お変わりなくて何よりと思われて、
私の憂い事は、 少々の不満という具合に
小さく納まっている。

読み終えた直後は、
温度差を感じ、虚しくなったが……。

何度も読み返すうちに、心が落ち着いて来た。

“人は不自由の中で生きていくもの”とは、
言い得て妙である。

義姉も何かしらの不満を抱えながら、
不自由に生きているのかもしれない。

夫とのこれからを思うと心配の種は尽きない。
が、先のことは、先のことである。

不自由の中で生きていくと割り切ってしまえば、
案外、生き易いようにも思えて来た。

義姉に愚痴をこぼしたことを恥ずかしく思った。
丁寧に言葉を選んで、
したためてくれた義姉の優しさには、頭が下がる。

義姉に余計な心配を掛けないよう、
尋ねられない限り、
もう、夫の事は語らないでおこうと決めた。

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Y様

お心遣い、ありがとうございます。

「夫を見捨てた自分」になりたくない。
これもご縁と見届けるのが、
自然の流れのような気がしております。

私も頑固者です(笑)

去年の10月に退院して以来、
4週ごとの外来通院は、夫一人で行っておりましたが……。
よぼよぼして危ういので、昨日は付き添いました。

生きててもらわなければ、
回復も泡と消えてしまいますから。。。。

Y様のメッセージには、いつも勇気付けられます。
本当にありがとうございます。

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No title

私は、小吉さんのようには、なかなか思えません。ご主人様のお姉さんになら心配をかけてもいいのではないでしょうか?どんどん心配して頂きましょうよ。って思ってしまいます。
これって甘えですか?お姉さんにとっても大切な弟さんかと思うのですが。逆に私なら手助けできなくとも真実を知りたい。何でも知りたいと思うからこそ、きっと伝える気がします。ただ、一度伝えようとして伝わらなかったり、愛のない返答だったりした場合は私も二度と言わないと決めるかと。優しさを感じてもう言わないと決められた小吉さんの気持ちが理解できずすみません。

内緒様

詳細な情報、ありがとうございます。

行き止まりのような中におりますので、
いろいろ参考になります。

ありがとうございます。

嫁。 様

嫁。様の仰る通りです。

「お姉さんになら心配をかけてもいい」
「何でも知りたい」に違いない。
初めは、そんなふうに思っていました。

義姉は、痴呆の母を看ています。
大変なことなのに、愚痴ひとつこぼしません。
夫の母でもあるのですが、
義姉に押し付けたまま、傍観状態でいられるのは、
彼女の配慮だと思っています。

目の前の夫の問題に集中できるようにと、
あえて、距離を置いてくれているのだと思えて、
有り難く感じました。

だから、私も、
義姉とは適切な距離を取りたいと思いました。

なんか、言い訳がましくて、ごめんなさい。

コメントいただき、うれしく思います。
ありがとうございます。



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小吉

Author:小吉
相棒の発症のおかげで、
加減して飲むことを学習。
依存症予備軍!?
猫舌の呑助です。。。。。

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