腫れ物に触るように、残りの時間を過ごし、
夫が病棟に戻る日になった。
私の出勤時間と重なっていたため、
部屋の戸締りをして、玄関先に向かうと……。
身支度を終えた夫は、手提げ袋に、
何かを押し込んでいるところだった。
その何かが、少しだけ見えた。
安価なウイスキーの中瓶だ。
入院前の飲み残しが、部屋のどこかに、
隠してあったのかもしれない。
整理整頓中に、隠し酒とご対面、
そして、それを飲んだとしたら……。
一連の不可解な夫の行動が全て納得できる。
気が付かない振りをして、やり過ごそうと、
いったんは胸に収めたが、駄目だった。
「今度こそ」の期待が壊されたと思うと、
私は、黙っていられない女になった。
「空き瓶、見えちゃったんだけど……。
お酒、飲んだの? まさか、飲んでないよね?」
マンションの正面玄関を出た夫に駆け寄り、
その後ろ姿に、遠慮がちに聞いてみた。
夫は振り向きもせず、小声で「あぁ」と言いながら、
駅に向かうバス停へと、どんどん歩き出し……。
割り切れない思いのまま、
私は、反対方向の職場へと自転車をこぎ出した。
桜が満開になれば、退院の見通しだ。
気が緩んだのか?
魔が差したのか?
いったい、夫は何を考えているのやら。
病気が大きすぎて、受け入れられないのだろうか。
飲まない生き方を選択し、
自分を変えていくのは難しいことだが……。
心身の健康を取り戻すには、断酒以外に道はない。
往生際が悪すぎる。
いい加減、目覚めて下さいな。
と、夫が変わってくれることを
切望している自分に、はっとした。
夫の世話を焼いている場合ではないのだ。
変わらなければいけないのは、私だ。
夫の生き方は、夫が決めればいい。
私は、私の人生を生きればいい。
残り少なくなってきた私の人生を
つまらなく終わりにしたくない。
だから、いやな思いは、引きずらない。
『過去に感謝、未来に希望、
現在には勇気と寛容な心』
また、週末がやって来る。
もちろん、夫もやって来る。
心穏やかに、迎い入れたいと思っている。
夫が病棟に戻る日になった。
私の出勤時間と重なっていたため、
部屋の戸締りをして、玄関先に向かうと……。
身支度を終えた夫は、手提げ袋に、
何かを押し込んでいるところだった。
その何かが、少しだけ見えた。
安価なウイスキーの中瓶だ。
入院前の飲み残しが、部屋のどこかに、
隠してあったのかもしれない。
整理整頓中に、隠し酒とご対面、
そして、それを飲んだとしたら……。
一連の不可解な夫の行動が全て納得できる。
気が付かない振りをして、やり過ごそうと、
いったんは胸に収めたが、駄目だった。
「今度こそ」の期待が壊されたと思うと、
私は、黙っていられない女になった。
「空き瓶、見えちゃったんだけど……。
お酒、飲んだの? まさか、飲んでないよね?」
マンションの正面玄関を出た夫に駆け寄り、
その後ろ姿に、遠慮がちに聞いてみた。
夫は振り向きもせず、小声で「あぁ」と言いながら、
駅に向かうバス停へと、どんどん歩き出し……。
割り切れない思いのまま、
私は、反対方向の職場へと自転車をこぎ出した。
桜が満開になれば、退院の見通しだ。
気が緩んだのか?
魔が差したのか?
いったい、夫は何を考えているのやら。
病気が大きすぎて、受け入れられないのだろうか。
飲まない生き方を選択し、
自分を変えていくのは難しいことだが……。
心身の健康を取り戻すには、断酒以外に道はない。
往生際が悪すぎる。
いい加減、目覚めて下さいな。
と、夫が変わってくれることを
切望している自分に、はっとした。
夫の世話を焼いている場合ではないのだ。
変わらなければいけないのは、私だ。
夫の生き方は、夫が決めればいい。
私は、私の人生を生きればいい。
残り少なくなってきた私の人生を
つまらなく終わりにしたくない。
だから、いやな思いは、引きずらない。
『過去に感謝、未来に希望、
現在には勇気と寛容な心』
また、週末がやって来る。
もちろん、夫もやって来る。
心穏やかに、迎い入れたいと思っている。