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撤回

回復の見通しもたっていないのに、
退院なんて、馬鹿げている。

でも、夫のことだ。
有言実行するに違いない。

「明日、帰るから。。。。」

夫が宣言した「明日」は、私の勤務日だった。
迎えには行けない。

帰りたければ、ひとりで荷物をまとめて、
帰ってくればいい。

その朝、7時を過ぎた頃、私の携帯電話が鳴った。
もちろん、夫からだ。

私は大きく深呼吸してから、電話を取った。
夫が喋り出さないので、
少しの間、気まずい沈黙が続いた。

「。。。もうちょっと、ここにいる。。。。」

消え入りそうな小さな声だったが、
自主退院を撤回して、入院を続ける気になっている。

「そうだね。 それがいいと思う」

「うん」

「よく、思い直してくれましたね。
 ありがとう!!」

「うん」

「本当に、よく、決心してくれましたね。
 私、とっても、うれしい。
 本当に、本当に、ありがとう!!」

「うん」

とどまってくれたことが有り難くて、
私は、「ありがとう」を連発していた。

夫は、この病気を何とか治めたいと、
真剣に思い始めているのかもしれない。

治療が続くことで、体が楽になり、
きっと、心も落ち着きを取り戻すことだろう。

アルコール依存症関連の本を読みあさって、
ノートに書き留めた一文がある。

『……アルコール依存症とは、
 誰かに「治してもらう」的な病気ではなく、
 回復への自分自身の努力が必要……
 ……アルコール依存症の専門医療とは、
 回復のための協力者で、
 これだけで回復できるものではない……』

専門治療に三度繋がったが、まだまだ、これからだ。
病気回復の鍵は、夫自身が握っているのだ。

実は、私の夫は努力家でもあるのだ。

「アルコールのいらない生き方」のために、
今こそ、その能力全てを使って欲しいと思う。
プロフィール

小吉

Author:小吉
相棒の発症のおかげで、
加減して飲むことを学習。
依存症予備軍!?
猫舌の呑助です。。。。。

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