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衝突

退院してから3カ月余りで、
また、この病院に舞い戻って来たのだ。
少しも、断酒できていない。。。。。

入院初日、夫の担当と名乗る看護師が挨拶に来た。
私は、お恥ずかしいやら情けないやらで、
病室の隅で、気まずく恐縮していた。

「また、お世話になることになりまして……。
 ご面倒をお掛けしますが……。
 どうぞ、よろしくお願いします。。。。。」

看護師さんは、うら若き女性だった。

「他の病院ではなく、
 よく、この病院に来て下さいましたね。
 また、ここで治療しようと、
 よく決心してしてくれましたね。
 戻って来てくれて、本当に良かったです。
 お身体、治していきましょうね」

にこにこと優しい笑顔で、迎えてくれた。

「実は、もう、入院は3回目なのです。
 今度こそ、うまくいくといいのですが……」

私が、夫をたしなめるような言い方をすると、

「今までの入院も、決して無駄にはなっていませんよ。
 経験は味方ですから……。 
 ここで、専門の治療を受けて、
 回復へと繋げていきましょうね」

看護師さんの温かい歓迎の言葉に、
夫は、目を潤ませ、声を詰まらせていた。

やっぱり、ここに戻って来てよかった。
今度こそ、改心して、
夫は飲まない生き方を目指すかもしれない。

離脱症状で、夫の手や体は小刻みに揺れ始めていた。
でも、私は、治療へと繋がったことに安堵していた。

P1060943.jpg

そして、入院5日目、
離脱症状も落ち着いた頃かと思っていたが……。
夫は、病室で不満を増大していたのだった。

「明日、退院する。
 ここにいたら、ストレスがたまるばかりで……。
 看護師同士の申し送りが出来ていなくて、
 俺の話は、全然伝わってないし……。
 俺は、何度も同じことをしゃべらされて……。
 尋ねているのに、回答は看護師ごとにバラバラで、
 今日も別の看護師と衝突した。 
 もう、いやだ。 ここにいたくない。 我慢の限界だ!!」

夫はキレてしまった。
入院生活に不自由さは付きものだ。
病人といえども、ある程度の我慢は必要だと思う。
看護師さん達は、皆、忙しく大変なのだ。
夫ひとりだけを看ているわけではないのだ。

あぁ、また、夫のわがままが始まった。
自分のことしか、自分の都合しか頭にない。。。。

時計は、夜の12時を回っていた。

夫が家にいないので、私は高枕を満喫していたのだ。
その寝入りばなを叩き起こされ、
自主退院の話なんて……夢なら、覚めて欲しい。

私は、ただただ、夫の話に相槌を打ち続けていた。
「そうなんだ」「そうだね」「わかった」。。。。。。。。

夫の気が済むようにすればいい。
私が、じたばた騒いだところで、どうなるものでもない。

電話を切った後、
「勝手にしやがれ!!  おバカじじい!!」と、
毒突くと、何だかスッキリしてしまい、すぐに眠れた。

一筋縄ではいかない夫と暮らすうちに、
したたかさが身に付いて……。

夫婦は、似て来るものだなぁ~。
影響力、恐るべしである。
プロフィール

小吉

Author:小吉
相棒の発症のおかげで、
加減して飲むことを学習。
依存症予備軍!?
猫舌の呑助です。。。。。

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