おそらく夫は、離脱症状が出るのが怖いのだと思う。
昨年6月、専門病院の外来を受診し、
2回目の入院を予約した帰り道、
小さなてんかん発作を何度も繰り返し、
結局、救急車を呼ぶ大発作になってしまったのだ。
これには、かなりの恐怖を覚えたようで、
一定量のアルコールは、体内に入れておかないと、
酒が切れたら、また、発作がやって来るに違いない。
夫は防衛策として、飲酒を正当化しているのだ。
飲むことを最優先させる病気を
抑える力は、私には無い。
今回も初診予約日までは、
酒は必需品で、手放せない様子だった。
そんな最中だった。
深夜、携帯の着信音が鳴り響き、私は目覚めた。
夫の携帯からだったが、声の主は夫ではない。
「履歴を見て、お電話しました。
ご主人様が、道の端に倒れていたので……。
家まで送りましょうと言っても、遠慮されて……。
意識もあり、痛い所もないみたいですが、
おひとりでのお帰りは、心配で……」
心臓がバクバクしてしまった。
夫は、杖を頼りに歩いている。
日中こっそり、酒を買い足しに出ることはあったが、
膝を痛めてからは、夜間の外出はなくなっていた。
なんで、こんな時間に外をふらふらして……。
なんで、なんで、なんで。。。。。。
同じフレーズが頭の中をぐるぐる回っていた。
夫は自宅から少し離れた坂の上の住宅地にいた。
すぐに、家を飛び出し、迎えに行った。
夫は、低い石崖にちょこんと座っていた。
その側に、夫を見守る若夫婦が立っていた。
真冬の夜空の下で、
これ以上、待たせては申し訳ないので、
名前と住所を聞き出し、お礼もそこそこに退散。
覚束ない足取りの夫の腕をつかみ、家路に着いた。
「眠れないから、散歩に出たんだ。
後は覚えていない。
わからない。 全然わからない」
泣きじゃくる夫を問い詰めても、無意味だ。
「もう、大丈夫だから。 体を休めよう。
眠れないかもしれないけど……。
横になったほうがいい。 もう、大丈夫だから」
夫をなだめながらも、私の頭の中は混乱していた。
全然、大丈夫じゃ、ないじゃん。
危うく、野垂れ死にする所だった。
まだ1週間も先の予約なんて、待っていられない。
夫も、混乱していた。
「俺は、どうすればいいんだ!!
何も、わからないし、考えられないんだ。
おまえが決めてくれ!! 助けてくれ!!」
初診予約した新しい病院か、
すぐ再診可能な以前の病院か。
選択肢は、ふたつしかないことを伝えると、
夫は、毛嫌いしていた以前の病院を希望した。
「好きじゃないけど、あの病院の方が、
中の様子や流れも知っているので、楽だ。
新しい病院がいいとは限らないし……」
本人の意向通りに、あの病院まで付き添うことが、
私の役目になった。
翌朝、電車とバスを乗り継いで、
昨年の秋に退院した病院へと向かった。
4か月足らずで、また、お世話になるとは……。
季節が冬という以外は、勝手知った風景だ。
なんだか、懐かしくもある。
昨年6月、専門病院の外来を受診し、
2回目の入院を予約した帰り道、
小さなてんかん発作を何度も繰り返し、
結局、救急車を呼ぶ大発作になってしまったのだ。
これには、かなりの恐怖を覚えたようで、
一定量のアルコールは、体内に入れておかないと、
酒が切れたら、また、発作がやって来るに違いない。
夫は防衛策として、飲酒を正当化しているのだ。
飲むことを最優先させる病気を
抑える力は、私には無い。
今回も初診予約日までは、
酒は必需品で、手放せない様子だった。
そんな最中だった。
深夜、携帯の着信音が鳴り響き、私は目覚めた。
夫の携帯からだったが、声の主は夫ではない。
「履歴を見て、お電話しました。
ご主人様が、道の端に倒れていたので……。
家まで送りましょうと言っても、遠慮されて……。
意識もあり、痛い所もないみたいですが、
おひとりでのお帰りは、心配で……」
心臓がバクバクしてしまった。
夫は、杖を頼りに歩いている。
日中こっそり、酒を買い足しに出ることはあったが、
膝を痛めてからは、夜間の外出はなくなっていた。
なんで、こんな時間に外をふらふらして……。
なんで、なんで、なんで。。。。。。
同じフレーズが頭の中をぐるぐる回っていた。
夫は自宅から少し離れた坂の上の住宅地にいた。
すぐに、家を飛び出し、迎えに行った。
夫は、低い石崖にちょこんと座っていた。
その側に、夫を見守る若夫婦が立っていた。
真冬の夜空の下で、
これ以上、待たせては申し訳ないので、
名前と住所を聞き出し、お礼もそこそこに退散。
覚束ない足取りの夫の腕をつかみ、家路に着いた。
「眠れないから、散歩に出たんだ。
後は覚えていない。
わからない。 全然わからない」
泣きじゃくる夫を問い詰めても、無意味だ。
「もう、大丈夫だから。 体を休めよう。
眠れないかもしれないけど……。
横になったほうがいい。 もう、大丈夫だから」
夫をなだめながらも、私の頭の中は混乱していた。
全然、大丈夫じゃ、ないじゃん。
危うく、野垂れ死にする所だった。
まだ1週間も先の予約なんて、待っていられない。
夫も、混乱していた。
「俺は、どうすればいいんだ!!
何も、わからないし、考えられないんだ。
おまえが決めてくれ!! 助けてくれ!!」
初診予約した新しい病院か、
すぐ再診可能な以前の病院か。
選択肢は、ふたつしかないことを伝えると、
夫は、毛嫌いしていた以前の病院を希望した。
「好きじゃないけど、あの病院の方が、
中の様子や流れも知っているので、楽だ。
新しい病院がいいとは限らないし……」
本人の意向通りに、あの病院まで付き添うことが、
私の役目になった。
翌朝、電車とバスを乗り継いで、
昨年の秋に退院した病院へと向かった。
4か月足らずで、また、お世話になるとは……。
季節が冬という以外は、勝手知った風景だ。
なんだか、懐かしくもある。