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紹介状

病魔は、確実に、夫の体を蝕んでいる。
体の変調は、本人が、一番よく分かっていたはず。

「来年は、きっと、いないよ。生きていない。。。。」

夫が、そんな自暴自棄な物言いをするたびに、
私は、静かに、穏やかに、受診を勧めた。

「悪い所があるのなら、また、病院で診てもらおうね。
 治るか治らないかは、医者に決めてもらえば いいから。
 何もしないで悲観してても、何も解決しないから……ね」

2010年5月、
病院嫌いの夫を、再び、総合病院に連れて行くことが出来た。

温厚そうな年配の医師が、丁寧に夫を診てくれた。

「不調の原因は、お酒です。
 良い病院がありますので、紹介状を書きましょう。
 あまり、堅苦しく構えず、気軽に来院してみて下さい」

勧められた病院は、
アルコール依存症を治療する、有名専門病院だった。

やっと、本当の病気と向き合う時が来た!
病気は治らないが、
その進行を抑えることは出来る!!


楽観的になったのは、私だけで、
夫は、しょんぼりしていた。

紹介された病院へは行く様子もなく、1ヵ月が過ぎ、6月。

2人の子どもは、毎年、父の日のプレゼントを忘れない。
父がいてくれることへの感謝は、
添えられた、短い手紙の中に、いつも溢れていた。

夫は、まだまだ、生きていなくてはいけない、
大切な存在なのだ。

7月、七夕。
短冊に、父の具合を気遣い、無事を祈る、子どもたち。

家族は皆、専門病院での治療を強く望んでいたが……。
本人の意思を無視して、
強引に病院に連れて行くことは、出来ないでいた。

頂いた紹介状は、ただの紙くずになっていた。

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No title.

>夫は、まだまだ、生きていなくてはいけない、
>大切な存在なのだ。

涙が出ました・・・。

優しくない名無し様

生きててほしいと思っておりますが……。
「早く楽になりたい…」と、
夫は、生きることに背を向けたままです。。。。

No title.

>2人の子どもは、毎年、父の日のプレゼントを忘れない。
父がいてくれることへの感謝は、
添えられた、短い手紙の中に、いつも溢れていた

正直、私にはわかりません・・・
アル症になる前は、余程良いお父さんだったのでしょうか。

アル症の息子様

子煩悩な父親でした。
今も……。

子どもが父親をどう思っているのか、
本当の所は、子どもたちに聞かないと分かりませんが……。
プロフィール

小吉

Author:小吉
相棒の発症のおかげで、
加減して飲むことを学習。
依存症予備軍!?
猫舌の呑助です。。。。。

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