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どん底

病気の行方は、成り行きに任せる。
つまり、酒を飲む飲まないは、本人に任せる。

本人が「どん底」を体験しなければ、
アルコール依存症治療への扉は開かないのだ。

酒を飲み過ぎないようにと、
監視したり、口をはさんだり……は、
夫を苛立たせるだけ。

「成り行きに任せる」
そう、割り切ってしまうと、
気分が変わり、行動も変わった。

動けるうちにと、
毎月のように、映画館、行楽地、温泉旅行へと、
二人で出かけた。

2010年、4月。
結婚記念日に、思い出の地を旅した。

宿泊したホテルの夕食は、豪華な和洋会席。
酒は、二人で、熱燗の徳利5本と控え目にした。

食が細るばかりの夫は、
酒で、料理を胃の中に流し込んでいるように見えた。

夜中、水をかき出すような音が聞こえて、
私は、目を覚ました。

夫の姿がなかったので、
トイレに行ったのだと、思った。

しばらくしても戻らないので、様子を見に行くと……。

トイレの手前の洗面台で、夫は嘔吐したらしく……。
その汚物を水で流そうとしたのだが、詰まってしまい……。
今にも、洗面台から溢れそうになっていた。

夫は、洗面台にあった小さなコップで、
汚水をすくい取り、便器へ流し捨てていたのだ。

「大丈夫だから。寝てていいから。。。。」と、夫。

吐き過ぎて、辛そうな夫の姿を目の当たりにして、
見て見ぬふりは出来なかった。

新婚の頃は、どんちゃん騒ぎで、
毎日、楽しい酒だったのに……。

まさか、結婚25年目に、
夜中、宿泊したホテルで、
汚物処理に悪戦苦闘する自分がいるなんて、
夢にも思わなかった。

忘れられない、銀婚式になってしまった。

全ては、アルコールのなせる業だ。

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小吉

Author:小吉
相棒の発症のおかげで、
加減して飲むことを学習。
依存症予備軍!?
猫舌の呑助です。。。。。

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