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狂気

取り敢えずの父親の着替えを持って、
息子は、車で、病院に駆けつけてくれた。

夫の入院準備が整うまで、私と娘は、
入院病棟の待合室で待つよう指示されていた。

その部屋に息子が顔を出したのは、夜9時近く。

息子の仕事は、朝が早い。

「明日は、3時に家を出ないと間に合わないんだ。
 なんで、こんな時に入院なんかしてんだよ」

このところ、夫の奇行が度を越していて、
騒がしい深夜が続いていたのだ。

狭い間取りの我が家、
息子が安眠できるはずがなかった。

今日こそ早く寝ようと思っていた息子は、
突然の入院騒ぎで、また振り回されてしまったのだ。

心にゆとりがないと、愚痴が出て言葉もきつくなる。

「勝手に酒飲んで、身体、壊して。
 いい加減にしてほしいよ。
 ずっと、寝不足なんだ。 仕事が出来ないよ。
 酒やめられないなら、とっとと、死んでくれ!!」

兄の投げ遣りな言い方に、妹がキレた。

「なんで、そんな酷いこと言うの!!
 パパは、病気なんだから……」

「治す気もないくせに……。
 もう、振り回されるのは、たくさんだ。
 死ねばいいんだよ!!

残酷なことを言う兄が許せなかったのだろう。
娘は泣きながら、兄の頭や身体を叩いていた。

生まれて初めて妹に殴られた息子は、
頭に血がのぼってしまったのだろう。

あわや、取っ組み合いの喧嘩となりそうな勢いだった。

いい加減にしてほしい。
ここは、入院病棟の待合室だ。

ふたりの間に入り、冷静になるよう諭したが、
娘も息子も怒りが治まらない。

口が達者な娘は、兄をなじり続けて……。

その口を黙らせたい息子だったが、
妹に手を挙げることが出来ず……。

持っていた荷物を床に投げつけ、車のキーも叩きつけて……。

鍵はリモコンの部分が割れて、無残な姿になってしまった。

それでもまだ治まらない息子は、待合室の壁に八つ当たり。
こぶしで、壁を数回叩いていた。
 
P1060606.jpg

狂気の沙汰だ。 
家族がおかしくなっていく。

依存症の夫の言動ばかりに心奪われ、
その間の息子の苦悩を置き去りにしていたことを
私は、何度も何度も息子に詫びた。

娘と息子がこのまま居合わせたら、事態は収拾しない。
息子には、先に帰ってもらった。

やっと、夫の病室に案内されて、
娘とふたりで夫の様子を見舞うと、夫は眠っていた。

少しして、目を開けた夫は、息子の姿を探していた。
明日の早朝出勤に備えて先に帰ったと説明すると、
「そっか。。。」と、寂しげだった。

夜10時を回り、私たちは病院を後にした。
娘は、兄がいる実家には寄らずに、
電車を乗り継いで、自分の家へ帰って行った。

やっと、自宅に帰り着いた私は、
息子の手が気になり、息子の部屋を覗いた。
左手が湿布だらけだったが、
寝息を立てていたので、少し安心した。

保冷剤をハンカチで包み、息子の手に巻き付けて、
一息つくと、12時だった。
目まぐるしい一日が終わった。。。。。

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No title.

はじめまして。
ずっとブログを拝見しておりました。
日常の悪夢の中で何とか前を進もうとしている庄吉様を陰ながら応援しております。

今回のブログを拝見して一言だけ私からの意見を言わせてもらいます。
息子さんは寝不足が続いて苛立っているのでしょうか?ご主人様の言動・行動に振り回されてあばれたのでしょうか?私は少し違うと思いました。本当は小吉さんへの怒りではないかと・・・感じました。でも心の優しい息子さんはご苦労されているあなたには言えないのかなって思いました。 勝手なことを言ってすみません 

No title.

息子さんのお心考えると胸がつまります。
きっと、本当は言いたくもないこと口走ってしまったんだと思います。
心配してないなら、きっと電話の際に断ります。
疲れた身体休ませたいのにそれでも病院に来てくれた。
優しい息子さん。ご主人様と小吉様の息子さんです。
きっと言い過ぎたと後悔されてるかと思われます。
どうか、そのお心を酌んで差し上げて下さい。
お願いいたします。

言葉がありません。どうお声かけしたらよいのかわからない気持ちです。

酒に支配されてしまったものを、誰も「どうすることもできない」というしかありません。

ご家族の皆さん、「やりばのない怒り」しかないでしょう。

とにかく入院されたということで、アルコールは少し抜けるでしょうから、その時に旦那さんの心の変化があれば と お祈りいたしております。

カフェモカ 様

カフェモカ様からのご意見に、
はっとして、目が覚めた思いです。
私は、「母親への怒り」を「父親への怒り」と、
はき違えていたようです。

息子の手のケガを全て夫のせいにして、
私は、夫を責めてしまいました。

至らない自分が、もどかしく、
ため息が止まりません。。。。。。

嫁。様

精神的に不安定な状態だと、
人は、心にもないことを口にするようで……。

実際、息子は父親を慕っております。
男同士ということで、
気持ちが分かり合える部分があるようです。

父親の不調を誰よりも悲しんでいるのは、息子だと思います。

息子の気持ちを酌んで下さり、ありがとうございます。

匿名依存症者 様

酒の猛威で、家族は皆、平静を失ってしまいました。

緊急入院は、本来の依存症治療入院へとは繋がらず……。
未だに、宙ぶらりんで、夫は自暴自棄の中におります。

止まらない飲酒に、絶望感が募りますが……。
明けない夜はないと信じて、
気持ちが前を向くように仕向けているところです。

お気遣い頂きまして、ありがとうございます。


No title.

はじめまして。
いつもブログを読ませていただいておりました。
自分はいつも何故か周りにアルコール依存症の家族がいる友人がいます。
小吉様のご心痛、お察しします。

気になることがあり、僭越ながら記入しました。
断酒会の家族会などには参加されましたでしょうか。
一人で戦うにはあまりにも大きな問題です。
お子様たちも巻き込まれてしまうのが、この病の恐ろしさです。
保健所など専門部署などにもご連絡をとられることは難しいですか?
今こそ、分岐点かと思います。
奥様が専門家にご意見を求めることはいかかでしょうか。

ぴこ様

いろいろご心配下さり、ありがとうございます。

自分の心を落ち着かせるために、
本やブログを参考にしております。

「今こそ、分岐点」を気付かせて頂き、
本当にありがとうございます。

プロフィール

小吉

Author:小吉
相棒の発症のおかげで、
加減して飲むことを学習。
依存症予備軍!?
猫舌の呑助です。。。。。

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