たらい回しのような病院通いに、
疲れてしまったのかもしれない。
夫は診察を終えると、その足で電車に飛び乗り、
離れて暮らす娘に会いに行ったらしい。
今まで、娘の家へは車で行っていたので、
夫は、電車での行き方に疎かった。
途中の乗換駅で迷ってしまい、
改札を出て、人ごみをさまよううちに、
自分がどこにいるのか分らなくなってしまったそうだ。
うろたえ、取り乱す夫からの電話を受けて、
私も驚きあわててしまった。
仕事を早退して、取りあえず、現場へ向かった。
夫を迎えに行くための電車を待つ駅のホームで、
娘の携帯に電話を入れた。
娘は外出中で、式場の打ち合わせが済んだ所だった。
夫がいる場所に近い駅にいたので、応援を頼んだ。
一足先に着いた娘が、父親に寄り添って、
私の到着を待っていた。
夫は、ケロッとしていた。
電話口で、震える声で助けを求めていた、
頼りなげな夫は何処……。
夫は、事態を把握しているのだろうか。
父親の容体を案じて、その日は、
娘も実家に戻り、泊まってくれた。
家の中に、若い娘がいると、ぱっと明るく華やぐ。
夜遅くまで、親子3人の楽しいお喋りは続き、
そろそろ、お開きと思っていたら、夫の様子が急変した。
夫が、何か話そうとしているのだが、
口がパクパク動いているだけで、声がないのだ。
よく見ると、顔が、体が、小刻みに震えている。
手のひらや額に、じっとりと汗をかいていた。
こんな夫の姿を見たのは、初めてだった。
どう対処したらいいのか、見当がつかない。
昨夜、インスリン注射を忘れた夫は、
1日1回の処方の注射を昼と夜で2回分打っていた。
もしや、これが低血糖の症状なのだろうか。
思いつくままに、ブドウ糖の錠剤を夫の口に入れた。
夫は、きょとんとした目で、私を見つめていた。
娘が、「パパ、パパ」と問い掛けても、
口元は動いているのだが、言葉が出なかった。
数分して、ブドウ糖の錠剤を吐き捨てると、
何事もなかったかのように、夫はもとに戻った。
娘も私も、ほっと胸をなでおろしたのも束の間、
また、同じように震え出し、
今度は、座っていられず、倒れ込んでしまった。
口をパクパクしているだけで、声が出ていない。
あわてて、救急車を呼んだ。
救急隊が家についた時には、震えも治まり、
夫は、話も普通に出来る状態だった。
病院に行くことを夫が強く拒んだため、
呼んだ救急車は引き上げて頂くという、
大変申し訳ない結果になってしまった。
「本当に大丈夫なの?」
心配する私たちに、夫は言った。
「ごめん。 ちょっと、おどかしただけ。
わざとやったの。 驚かせて、ごめんね」
なんか、しっくりしなかったが、
見た目はいつもの夫に戻っていたので、
追求することなく、終わりにした。
夫は、誰よりも早く、
自身の身体の異変に気付いていたのだと思う。
週明け、専門病院へ行くことを約束してくれたのだ。
そこは、3年前、入院治療でお世話になった病院だ。
夫にとっては、嫌な思い出しか残っていない所だ。
回復の兆しを感じて、家族は、夫の決心を喜んだが、
事は、スムーズには運ばなかった。。。。。
疲れてしまったのかもしれない。
夫は診察を終えると、その足で電車に飛び乗り、
離れて暮らす娘に会いに行ったらしい。
今まで、娘の家へは車で行っていたので、
夫は、電車での行き方に疎かった。
途中の乗換駅で迷ってしまい、
改札を出て、人ごみをさまよううちに、
自分がどこにいるのか分らなくなってしまったそうだ。
うろたえ、取り乱す夫からの電話を受けて、
私も驚きあわててしまった。
仕事を早退して、取りあえず、現場へ向かった。
夫を迎えに行くための電車を待つ駅のホームで、
娘の携帯に電話を入れた。
娘は外出中で、式場の打ち合わせが済んだ所だった。
夫がいる場所に近い駅にいたので、応援を頼んだ。
一足先に着いた娘が、父親に寄り添って、
私の到着を待っていた。
夫は、ケロッとしていた。
電話口で、震える声で助けを求めていた、
頼りなげな夫は何処……。
夫は、事態を把握しているのだろうか。
父親の容体を案じて、その日は、
娘も実家に戻り、泊まってくれた。
家の中に、若い娘がいると、ぱっと明るく華やぐ。
夜遅くまで、親子3人の楽しいお喋りは続き、
そろそろ、お開きと思っていたら、夫の様子が急変した。
夫が、何か話そうとしているのだが、
口がパクパク動いているだけで、声がないのだ。
よく見ると、顔が、体が、小刻みに震えている。
手のひらや額に、じっとりと汗をかいていた。
こんな夫の姿を見たのは、初めてだった。
どう対処したらいいのか、見当がつかない。
昨夜、インスリン注射を忘れた夫は、
1日1回の処方の注射を昼と夜で2回分打っていた。
もしや、これが低血糖の症状なのだろうか。
思いつくままに、ブドウ糖の錠剤を夫の口に入れた。
夫は、きょとんとした目で、私を見つめていた。
娘が、「パパ、パパ」と問い掛けても、
口元は動いているのだが、言葉が出なかった。
数分して、ブドウ糖の錠剤を吐き捨てると、
何事もなかったかのように、夫はもとに戻った。
娘も私も、ほっと胸をなでおろしたのも束の間、
また、同じように震え出し、
今度は、座っていられず、倒れ込んでしまった。
口をパクパクしているだけで、声が出ていない。
あわてて、救急車を呼んだ。
救急隊が家についた時には、震えも治まり、
夫は、話も普通に出来る状態だった。
病院に行くことを夫が強く拒んだため、
呼んだ救急車は引き上げて頂くという、
大変申し訳ない結果になってしまった。
「本当に大丈夫なの?」
心配する私たちに、夫は言った。
「ごめん。 ちょっと、おどかしただけ。
わざとやったの。 驚かせて、ごめんね」
なんか、しっくりしなかったが、
見た目はいつもの夫に戻っていたので、
追求することなく、終わりにした。
夫は、誰よりも早く、
自身の身体の異変に気付いていたのだと思う。
週明け、専門病院へ行くことを約束してくれたのだ。
そこは、3年前、入院治療でお世話になった病院だ。
夫にとっては、嫌な思い出しか残っていない所だ。
回復の兆しを感じて、家族は、夫の決心を喜んだが、
事は、スムーズには運ばなかった。。。。。