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札束

ままならない体調も手伝って、夫は涙目だった。

「もう、働けないかもしれないから。。。。」

2009年、7月、
夫は、200万円の札束を私に差し出した。

田舎の母親から、「借りた」と、言っていた。

娘(当時大学3年生)の学費にするよう、
自分がいなくても、金の出し入れが出来るよう、
私名義の銀行口座で保管してほしいとの事。

夫は、思い詰めていた。
自分の命が終わる日を身近に感じ、
家族の行く末を案じていた。。。。。

2008年の年末、
緊急入院時の病名は、急性膵炎だったが、
その根っこには、アルコール依存症が隠れていたのだ。

退院後、治療継続中の飲んではいけない体なのに、
酒を我慢することが出来ない。
そして、飲み出したら、止まらない。。。。。
 
寝汗、こむら返り、疼痛、感覚麻痺、しびれ、
胃炎、下痢、弱視、不眠等々。

夫の体は、再び、酒害にさらされ、
数々の苦痛を訴えていた。

「大きな病院で、診てもらおうね。
 きっと、良くなるから……一緒に行こうね」

私が、いくら誘っても、
夫は、専門病院受診をかたくなに拒否し続けていた。

「もう、入院はイヤだ。。。。病院には行かない」

痛みを紛らすために、飲酒が止まらない。
酒は、鎮痛剤ではない。

「禁酒出来ないのは、アタシもパパも依存症かもね」
遠慮がちに、夫の顔色をうかがうと……。

「酒飲みは、みんな、アルコール依存症だよ」
夫は、他人事のように笑っていた。

このまま飲み続けて死ぬ道と、飲まずに生きる道。
決めるのは、夫だ。
私には、夫の命をコントロールする力はない。

全ては、成り行きに任せる。

夫の思いが籠った札束をじっと見つめながら、
私も覚悟を決めていた。 

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小吉

Author:小吉
相棒の発症のおかげで、
加減して飲むことを学習。
依存症予備軍!?
猫舌の呑助です。。。。。

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