桜前線の速さに便乗するかのように、
離れて暮らす娘が、春を届けにやって来た。
同居中の彼氏さんと連れ立って、我が家を訪問。
娘は普段着なのに、彼氏さんはスーツ姿。
彼氏さん自らが用意した手土産からも、意気込みが伝わる。

「。。。結婚させて下さい。。。。。」
深く頭を下げ、
絞り出すように言った彼の言葉に、夫が即答。
「はい、わかりました」
最愛の娘を持ち去る男の申し出を、
文句も注文も付けずに、いともあっさりと了解。
あんなに、ケジメにこだわっていたのに……。
他にもっと気の利いた台詞がなかったのだろうか。
ちょっと期待してしまった私は、
肩透かしを食ったような気持ちになった。
でも、娘の結婚相手が頭を下げてお願いしたことで、
父親としてのメンツが立ったのなら、良しとしよう。
娘の彼氏さんは、穏やかな好青年だ。
きっと、娘を大事にしてくれるだろう。
本来ならば、祝いの杯を取り交わしたいところだが……。
表向きは、アルコール御法度の夫なので、
一同、お茶をすすりながら、私のつたない手料理で歓談。
手土産の高級フルーツゼリーが、
平凡な食卓に花を添えてくれた。

若い二人が考える結婚式は、費用を抑えた「スマ婚」で、
挙式は、11月頃を希望しているらしい。
娘たちが帰って、静まり返った室内で、夫がつぶやいた。
「まだ、まだ、先の話だなぁ。 俺、生きてるかな?」
縁起でもないことを口にする夫。
自分の体調に、全く自信がないのだ。
隠れ飲みで、病状が悪化していることは、
本人が一番よく分かっているのだ。
「生きててもらわなければ困るから、
花嫁の父になるのだから、
体、大事にしないと……、ね」
夫は、うなずいていた。
でも、夫が酒を控えることはないだろう。
飲み出したらブレーキが効かなくなる、
アルコール依存症の真っ只中にいるのだから。。。。
離れて暮らす娘が、春を届けにやって来た。
同居中の彼氏さんと連れ立って、我が家を訪問。
娘は普段着なのに、彼氏さんはスーツ姿。
彼氏さん自らが用意した手土産からも、意気込みが伝わる。

「。。。結婚させて下さい。。。。。」
深く頭を下げ、
絞り出すように言った彼の言葉に、夫が即答。
「はい、わかりました」
最愛の娘を持ち去る男の申し出を、
文句も注文も付けずに、いともあっさりと了解。
あんなに、ケジメにこだわっていたのに……。
他にもっと気の利いた台詞がなかったのだろうか。
ちょっと期待してしまった私は、
肩透かしを食ったような気持ちになった。
でも、娘の結婚相手が頭を下げてお願いしたことで、
父親としてのメンツが立ったのなら、良しとしよう。
娘の彼氏さんは、穏やかな好青年だ。
きっと、娘を大事にしてくれるだろう。
本来ならば、祝いの杯を取り交わしたいところだが……。
表向きは、アルコール御法度の夫なので、
一同、お茶をすすりながら、私のつたない手料理で歓談。
手土産の高級フルーツゼリーが、
平凡な食卓に花を添えてくれた。

若い二人が考える結婚式は、費用を抑えた「スマ婚」で、
挙式は、11月頃を希望しているらしい。
娘たちが帰って、静まり返った室内で、夫がつぶやいた。
「まだ、まだ、先の話だなぁ。 俺、生きてるかな?」
縁起でもないことを口にする夫。
自分の体調に、全く自信がないのだ。
隠れ飲みで、病状が悪化していることは、
本人が一番よく分かっているのだ。
「生きててもらわなければ困るから、
花嫁の父になるのだから、
体、大事にしないと……、ね」
夫は、うなずいていた。
でも、夫が酒を控えることはないだろう。
飲み出したらブレーキが効かなくなる、
アルコール依存症の真っ只中にいるのだから。。。。