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花嫁の父

桜前線の速さに便乗するかのように、
離れて暮らす娘が、春を届けにやって来た。

同居中の彼氏さんと連れ立って、我が家を訪問。

娘は普段着なのに、彼氏さんはスーツ姿。
彼氏さん自らが用意した手土産からも、意気込みが伝わる。

P1060403_20130329212928.jpg

「。。。結婚させて下さい。。。。。」

深く頭を下げ、
絞り出すように言った彼の言葉に、夫が即答。

「はい、わかりました」

最愛の娘を持ち去る男の申し出を、
文句も注文も付けずに、いともあっさりと了解。

あんなに、ケジメにこだわっていたのに……。
他にもっと気の利いた台詞がなかったのだろうか。

ちょっと期待してしまった私は、
肩透かしを食ったような気持ちになった。

でも、娘の結婚相手が頭を下げてお願いしたことで、
父親としてのメンツが立ったのなら、良しとしよう。

娘の彼氏さんは、穏やかな好青年だ。
きっと、娘を大事にしてくれるだろう。

本来ならば、祝いの杯を取り交わしたいところだが……。
表向きは、アルコール御法度の夫なので、
一同、お茶をすすりながら、私のつたない手料理で歓談。

手土産の高級フルーツゼリーが、
平凡な食卓に花を添えてくれた。

P1060411.jpg

若い二人が考える結婚式は、費用を抑えた「スマ婚」で、
挙式は、11月頃を希望しているらしい。

娘たちが帰って、静まり返った室内で、夫がつぶやいた。
「まだ、まだ、先の話だなぁ。 俺、生きてるかな?」

縁起でもないことを口にする夫。
自分の体調に、全く自信がないのだ。

隠れ飲みで、病状が悪化していることは、
本人が一番よく分かっているのだ。

「生きててもらわなければ困るから、
 花嫁の父になるのだから、
 体、大事にしないと……、ね」

夫は、うなずいていた。
でも、夫が酒を控えることはないだろう。
飲み出したらブレーキが効かなくなる
アルコール依存症の真っ只中にいるのだから。。。。

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No title.

なにはともあれ、いい事ありですね。
おめでとうございます。

yamadagaga 様

ありがとうございます。

祝いに酒は付き物と、都合のいい解釈で、
断酒を遠ざけているのが、見え見えなのですが……。

なにはともあれ……です。(^-^)




プロフィール

小吉

Author:小吉
相棒の発症のおかげで、
加減して飲むことを学習。
依存症予備軍!?
猫舌の呑助です。。。。。

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