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鬼は内

酒のつまみばかりが並ぶ晩御飯だった。

飲んでいた頃は、日が暮れると、
「今日も、一日、お疲れさん!!」で、
晩酌優先のメニューしか、思い浮かばなかったのだ。

酒が入ると、だらだらと、食べ続け、飲み続け……。
そして、気が大きくなり、横柄にもなる。

あげく、夫のひと言に執拗にこだわり、絡む。
結果、夫の逆鱗に触れてしまうことも多々。

P1060359.jpg

あの時も、口が減らない私に、夫の怒りが爆発して……。
私は、触れてはならないことを吐き捨ててしまったのだ。

父親を嫌悪していた夫に対して、
「おとうさんにそっくりじゃん!!」

夫は鬼のような形相で、私の胸ぐらをつかむと、
「何で、そんなこと言うんだ! 何で!! 何で!!!」
と、私の体を前後にぶんぶん揺すり続けた。

ただならぬ気配に、隣室にいた娘が飛んで来て……。
「やめて、やめて!! ママが死んじゃう!!」

まだ10歳にもならない娘の叫び声で、
夫は、私の服から手を放したのだ。

小さな娘に大きな不安を与えても、
酔っ払った親は、呑気なものだ。

「ママ、大丈夫?」と、気遣う娘に、

「お気に入りのセーターだったのに……。
 パパがぶんぶん引っ張るから、こんなに伸びちゃって……。
 もう、着れないよぉ~~~」

私は服の心配をしていたのだから、どうしようもない。
だいたい、なんで、喧嘩になったのかもよく分らない。

酒がいけないのだ。
お互い、飲み過ぎなのだ。

愚かな親の仲裁に入らなければならなかった娘を思うと、
本当に申し訳なくて……。

こういう環境が、子どもにとって、いいわけがない。

にも関わらず、
親よりマシに育ってくれたのが、救いだ。

社会人になった娘は、
料理教室へ通ったり、料理本を買い揃えて、
自分の味を作り出している。

家に来た時は、新作を披露してくれる。

夫は、ご機嫌だ。
食が細くなってしまった夫の御飯が進む。

娘は良い妻、そして、良い母になるだろう。

相変わらず、夫の隠れ飲酒は続いている。
でも、私は素知らぬ顔をして、
娘のレシピを頼りに、御飯のおかずを作っている。

素知らぬ振りは、
見放したようにも見捨てたようにもうつるから、
心苦しくなる時がある。

が、心を鬼にして、
淡々と接するようにしている。

いつまでも、負の風に晒されている夫じゃないはず。
いつか、きっと、風向きは変わると、信じたい。

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小吉

Author:小吉
相棒の発症のおかげで、
加減して飲むことを学習。
依存症予備軍!?
猫舌の呑助です。。。。。

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