長い入院生活から解放された夫が、
やりたかったのは旅に出ることだった。
故郷山口県の中学時代の同級生たちに会いに行く。
ついでに、生家の熊本県まで足を伸ばす。
3年前の自損事故で、普通自動車は全損したので、
我が家にあるのは、軽自動車のワゴンRだけ。
近くに越して来た娘一家が、たまに走らせている。
10年前に買った車なので、だいぶお疲れさんで、
長距離ドライブには不向き。
車で故郷に行くつもりの夫は、買い替えを考えていた。
「ミニクーパーが欲しい。中古でいいから」
「中古より新車の方が安心して乗れると思う。
ミニクーパーの新車は高いから、予算オーバー」
夫専用の車ではなく、
私や娘一家が利用できるような軽自動車を薦めた。
田舎へ帰るための車をすぐに手に入れたかった夫は、
渋々、軽自動車のタントカスタムを購入。
この渋々が、いけなかった。
気に入らないのだ。
興味ない車なので、使い方も覚えようとしない。
この車で取り敢えず、故郷周遊を敢行したのだが、
途中でカーナビが作動しなくなったり、
エンジンがかからなくなったりと、
アクシデントがあったそうで……。
「外れ品を買わされた」と、夫は立腹していた。
こちらに戻って来て、すぐに車を点検に出したが、
これといって故障個所は見当たらなかった。
おそらく、夫の使い方が間違っていたのだろう。
夫は、タントを欠陥品と決めつけて、
これを下取りにして中古のミニクーパーを
買う手続きを勝手に進めてしまった。
「ミニクーパーに乗るのが夢だったんだ。
他に夢はないんだから……。
最後の夢なんだから……、いいだろ」
夢の押し売りをする夫に、腹が立った。
「パパのやり方にはついていけない。
二人で話し合って、タントを買ったのに……。
2週間足らずで処分してしまうなんて、強引すぎる。
夢って、何?
パパの夢に振り回されて、家族はがっかりさせられて……。
もう、たくさんだ。
一事が万事この調子、もう、一緒には暮らせないね」
少し距離を置いた方がいいと思った。
自転車で20分位の実家に身を寄せる話を持ち出した。
「お前は、ここに住んで居ればいい。
俺が出て行くから。田舎に帰るから」
病を抱えた夫が、遠く離れて一人で暮らせるのだろうか。
余計なお世話と思いながらも、夫の身を案じてしまう。
と、夫の口から、思いも寄らない言葉が飛び出した。
「田舎で一緒に暮らす女を決めている。
彼女は離婚して独り身、俺のことを好きだと言ってる。
貯金は半分ずつに分けよう。俺には現金を渡してくれ。
今の病院に通院するために、
月に1度は、こっちに帰って来るから、別居でいいだろう」
馬鹿じゃないの。考え方がおかしい。
「他の女と暮らすのなら、まずは、私と離婚でしょ」
「お前が出て行ったら、
ご飯作ってくれる人がいなくなるから、
一人は寂しいから……。
だから、田舎に帰って、同級生と暮らすことにしたんだ」
私は、代替えのきく家政婦だったのか。。。。。
腹立たしいやら、情けないやらで、
こんな屈辱受けたことがないと反論したら、
いちいち私の言動に絡んで来る始末。
しかも、目の前で、堂々と酒飲んでるし……。
煙草まで持ち込んで、ふかしている。
完全にイカレてる。
こそこそ隠れ飲みされるのも不快だが、
カミングアウト?して開き直られても、不快だ。
感情を抑えきれず、夫の脳天をぶん殴ってしまった。
「もっと殴れ」と、はやし立てられて、
頬っぺたを2,3回平手で叩いてしまった。
酔っ払っていた夫は、私が叩いた衝撃で横に転がった。
若い時だったら、取っ組み合いの喧嘩が始まっていたはず。
もう、体力も気力も無いのだろう。
夫は抵抗しなかった。
「俺が死ぬまで、殴ればいい」と言われ、
夫をなじる気は失せた。
馬鹿じゃないの。私を人殺しにさせるつもり。
アルコール脳のなせるわざと思っても、
許せる範囲を超えている。
約2年前に頂いた助言が浮かんだ。
「あなたは、寄生されています。 早く離れて下さい。」
そういうことだったのか。
あの時は、聞く耳を持たなかった私だけど、
今なら、素直に耳に届く。
やりたかったのは旅に出ることだった。
故郷山口県の中学時代の同級生たちに会いに行く。
ついでに、生家の熊本県まで足を伸ばす。
3年前の自損事故で、普通自動車は全損したので、
我が家にあるのは、軽自動車のワゴンRだけ。
近くに越して来た娘一家が、たまに走らせている。
10年前に買った車なので、だいぶお疲れさんで、
長距離ドライブには不向き。
車で故郷に行くつもりの夫は、買い替えを考えていた。
「ミニクーパーが欲しい。中古でいいから」
「中古より新車の方が安心して乗れると思う。
ミニクーパーの新車は高いから、予算オーバー」
夫専用の車ではなく、
私や娘一家が利用できるような軽自動車を薦めた。
田舎へ帰るための車をすぐに手に入れたかった夫は、
渋々、軽自動車のタントカスタムを購入。
この渋々が、いけなかった。
気に入らないのだ。
興味ない車なので、使い方も覚えようとしない。
この車で取り敢えず、故郷周遊を敢行したのだが、
途中でカーナビが作動しなくなったり、
エンジンがかからなくなったりと、
アクシデントがあったそうで……。
「外れ品を買わされた」と、夫は立腹していた。
こちらに戻って来て、すぐに車を点検に出したが、
これといって故障個所は見当たらなかった。
おそらく、夫の使い方が間違っていたのだろう。
夫は、タントを欠陥品と決めつけて、
これを下取りにして中古のミニクーパーを
買う手続きを勝手に進めてしまった。
「ミニクーパーに乗るのが夢だったんだ。
他に夢はないんだから……。
最後の夢なんだから……、いいだろ」
夢の押し売りをする夫に、腹が立った。
「パパのやり方にはついていけない。
二人で話し合って、タントを買ったのに……。
2週間足らずで処分してしまうなんて、強引すぎる。
夢って、何?
パパの夢に振り回されて、家族はがっかりさせられて……。
もう、たくさんだ。
一事が万事この調子、もう、一緒には暮らせないね」
少し距離を置いた方がいいと思った。
自転車で20分位の実家に身を寄せる話を持ち出した。
「お前は、ここに住んで居ればいい。
俺が出て行くから。田舎に帰るから」
病を抱えた夫が、遠く離れて一人で暮らせるのだろうか。
余計なお世話と思いながらも、夫の身を案じてしまう。
と、夫の口から、思いも寄らない言葉が飛び出した。
「田舎で一緒に暮らす女を決めている。
彼女は離婚して独り身、俺のことを好きだと言ってる。
貯金は半分ずつに分けよう。俺には現金を渡してくれ。
今の病院に通院するために、
月に1度は、こっちに帰って来るから、別居でいいだろう」
馬鹿じゃないの。考え方がおかしい。
「他の女と暮らすのなら、まずは、私と離婚でしょ」
「お前が出て行ったら、
ご飯作ってくれる人がいなくなるから、
一人は寂しいから……。
だから、田舎に帰って、同級生と暮らすことにしたんだ」
私は、代替えのきく家政婦だったのか。。。。。
腹立たしいやら、情けないやらで、
こんな屈辱受けたことがないと反論したら、
いちいち私の言動に絡んで来る始末。
しかも、目の前で、堂々と酒飲んでるし……。
煙草まで持ち込んで、ふかしている。
完全にイカレてる。
こそこそ隠れ飲みされるのも不快だが、
カミングアウト?して開き直られても、不快だ。
感情を抑えきれず、夫の脳天をぶん殴ってしまった。
「もっと殴れ」と、はやし立てられて、
頬っぺたを2,3回平手で叩いてしまった。
酔っ払っていた夫は、私が叩いた衝撃で横に転がった。
若い時だったら、取っ組み合いの喧嘩が始まっていたはず。
もう、体力も気力も無いのだろう。
夫は抵抗しなかった。
「俺が死ぬまで、殴ればいい」と言われ、
夫をなじる気は失せた。
馬鹿じゃないの。私を人殺しにさせるつもり。
アルコール脳のなせるわざと思っても、
許せる範囲を超えている。
約2年前に頂いた助言が浮かんだ。
「あなたは、寄生されています。 早く離れて下さい。」
そういうことだったのか。
あの時は、聞く耳を持たなかった私だけど、
今なら、素直に耳に届く。