fc2ブログ

執着

内視鏡手術が適応できる癌なのだ。
手遅れとは、ほど遠い。

気楽に構えていればいいものを……。

悪い方にばかり思いを巡らせて、
夫は自身を重病人に仕立て上げていたように見えた。


当初の予定通り、がんセンターに入院し、
夫が薬で眠らされている間に、手術は終了したのだ。

担当医が、切り取った膜のようなものを私に見せて、
「全て、取り切れましたよ」と成功宣言。

これで、夫の取り越し苦労も終わったと思った。


病室に戻された夫は、飲食禁止で24時間点滴。
起き上がる動作も禁止。
ベッドで寝たままの状態で過ごすことに…。

アルコール依存症治療病院での問題行動は、
こちらの病院にも伝わっていたため、
看護師から夫の付添いを打診された。

断るわけにもいかず、急遽、夫の監視役で、
一晩付き合うことになってしまった。

その夜、夫は、
点滴に対する不満、身体を動かせない苦痛、
眠れないイライラをぼそぼそと愚痴っていた。

「煙草は止めないけど、酒はコップ1杯で止める。
 それ以上、飲まないよう、隠して置いてくれ」

「隠すとかじゃなくて、私はお酒を買わないよ」

夫の酒への執着にはうんざりする。
こんな話は、さっさと切り上げたい。

こっちは、早朝より同行して、
まともに食事も摂らずに、あげく、簡易ベットで
付き添うことになってしまったのだ。

「疲れたから、そろそろ、寝たいんだけど」

「なんで、おまえが疲れるんだ。何にもしてないのに」

私の中で何かが切れた。
これ以上、夫に関わりたくないと思った。

私は寝たふりをした。

夫がうっとうしく思えて仕方がなかった。。。。。

その後、
無意識に起き上がろうとする夫を何度も制して、
うたた寝で夜が明けた。
プロフィール

小吉

Author:小吉
相棒の発症のおかげで、
加減して飲むことを学習。
依存症予備軍!?
猫舌の呑助です。。。。。

ランキング
カウンター
カテゴリ
最新記事
最新コメント
月別アーカイブ