指定された検査日に、がんセンターを受診した。
内視鏡検査を受けて、がんの状態を確認。
治療方針の決定は、次回の外来で告げられる手はずだった。
アルコール依存症の専門病院に入院しながら、
がんセンターでの内視鏡手術入院を待つ。
がんもアルコールも退治したいという欲張った治療。
全ては、順調に運んでいると思っていた。
ところが、内視鏡検査を終えた日から、
夫の挙動がおかしくなった。
物を置き忘れて、なくす。
今さっきのことが思い出せない。
頭の中は混乱し、会話が噛み合わない。
夫は、記憶が飛んでしまうことを気に病んでいた。
胸がもやもやして息苦しいとも訴えていた。
精神安定剤が処方されたが、症状は改善されず……。
入院中の日課になっていた散歩で、
院外に出た夫は、酒屋へ行き、ビールを飲んだらしい。
その後、病室に戻った夫は、
首を吊ろうとして失敗したそうだ。
任意入院だった夫は、保護観察入院に切り替わり、
鍵のかかる個室へ移された。
病院からの知らせを受けて、
慌てて駆け付けたのだが……。
看護師に付き添われて、ロビーに出て来た夫は、
私を見て、きょとんとしていた。
「あんなことして、奥さんを驚かせちゃダメでしょ」
女性看護師にたしなめられた夫は、
「おかしいな。うまくいくと思ったのに、
失敗しちゃったんだよ」
明るい口調で言うので、こちらは、力が抜けてしまい、
腹立たしくもあり、思わず口走ってしまった。
「失敗って。失敗はダメでしょ。
やるんだったら、成功しなくちゃ」
私の言葉で、夫も看護師も一瞬固まったが、
ブラックジョークと受け止めたようで、
「まあ、まあ、今回は、失敗で良かったじゃない」
笑いながら、看護師が私の肩を優しく叩いた。
『がん細胞の存在を知っても、夫はあっさりしていた』
これは、見誤りだった。
夫は、意外と繊細だったのだ。
がんを恐れるあまり、情緒が極度に不安定になり、
数々の問題行動へと繋がったように思える。
恐怖から逃げたくて、酒に走る。
自分の身に起こっていることをしらふの状態で
受け入れることが出来ないのだろう。
嫌なことは、酒で誤魔化してやり過ごして来たのだ。
簡単に、生き方は変えられない。。。。。
この騒動で、がんセンターの外来予約はドタキャン。
後日、私一人でがん治療の話を聞きに行くことになった。
内視鏡検査を受けて、がんの状態を確認。
治療方針の決定は、次回の外来で告げられる手はずだった。
アルコール依存症の専門病院に入院しながら、
がんセンターでの内視鏡手術入院を待つ。
がんもアルコールも退治したいという欲張った治療。
全ては、順調に運んでいると思っていた。
ところが、内視鏡検査を終えた日から、
夫の挙動がおかしくなった。
物を置き忘れて、なくす。
今さっきのことが思い出せない。
頭の中は混乱し、会話が噛み合わない。
夫は、記憶が飛んでしまうことを気に病んでいた。
胸がもやもやして息苦しいとも訴えていた。
精神安定剤が処方されたが、症状は改善されず……。
入院中の日課になっていた散歩で、
院外に出た夫は、酒屋へ行き、ビールを飲んだらしい。
その後、病室に戻った夫は、
首を吊ろうとして失敗したそうだ。
任意入院だった夫は、保護観察入院に切り替わり、
鍵のかかる個室へ移された。
病院からの知らせを受けて、
慌てて駆け付けたのだが……。
看護師に付き添われて、ロビーに出て来た夫は、
私を見て、きょとんとしていた。
「あんなことして、奥さんを驚かせちゃダメでしょ」
女性看護師にたしなめられた夫は、
「おかしいな。うまくいくと思ったのに、
失敗しちゃったんだよ」
明るい口調で言うので、こちらは、力が抜けてしまい、
腹立たしくもあり、思わず口走ってしまった。
「失敗って。失敗はダメでしょ。
やるんだったら、成功しなくちゃ」
私の言葉で、夫も看護師も一瞬固まったが、
ブラックジョークと受け止めたようで、
「まあ、まあ、今回は、失敗で良かったじゃない」
笑いながら、看護師が私の肩を優しく叩いた。
『がん細胞の存在を知っても、夫はあっさりしていた』
これは、見誤りだった。
夫は、意外と繊細だったのだ。
がんを恐れるあまり、情緒が極度に不安定になり、
数々の問題行動へと繋がったように思える。
恐怖から逃げたくて、酒に走る。
自分の身に起こっていることをしらふの状態で
受け入れることが出来ないのだろう。
嫌なことは、酒で誤魔化してやり過ごして来たのだ。
簡単に、生き方は変えられない。。。。。
この騒動で、がんセンターの外来予約はドタキャン。
後日、私一人でがん治療の話を聞きに行くことになった。