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10%

今度の入院の行方は、どうなるのだろう。
大きな期待は禁物だが、
少しでも良い方向に……と、思ってしまう。

入院当日は、外来での主治医ではなく、
入院担当の精神科医と内科医の診察がある。

精神科医は、夫の分厚いカルテを
ぱらぱらとめくりながら、喋り出した。

「5回目の入院になりますね。
 ここは、断酒したい人を治療する所ですよ。
 本当に断酒する気があるのですか?」

「飲まないようにしたいです」

夫の頼りない返事を受けて、
医師はますます、疑り深くなった。

「この病院のデータによると、
 3回以上の多数入院の人の断酒は、
 10%と低いんですよ。
 ○○さんも、もう、断酒は無理でしょう。
 短期の解毒入院にしときますか?」

断酒不可能の烙印を押されてしまった。

「いや、通常の入院でお願いします」

夫がきっぱりと言い切ったので、
私も、自分の思いを口にした。

「ゼロではなくて、10%の人が、
 断酒できているんですよね。
 夫がその10%に入るかもしれないから、
 通常の入院治療で様子を見たいです。。。。」

入院が夫の希望なのに、門前払いでは悲しすぎる。
アルコール依存症は病気なのだから、
まずは、入院して専門医療を受けるのが王道だと、
私は思っている。

「ぜひ、断酒を成功させて、
 この病院の断酒率の向上に貢献して下さいね」

お手並み拝見という医師の言葉で、
精神科の診察は終了。

次に、内科医の診察を受けた。
入院の常習犯?への定番質問。

「何で飲んだのですか?」

「何となく……」

医師も私も、夫の間が抜けた返答に
面食らってしまった。

「何となくって……。 理由もなく、ですか。
 はあーーーー、それは、かなり重症ですね」

気まずい空気が漂い、
夫は黙りこくってしまった。

「○○さんの場合、断酒が出来れば、
 糖尿病は劇的に良くなります。
 肝硬変も改善されるはずです。
 本当に、これが最後のチャンスなんですよ。
 飲み続けていれば、近い将来、命はありません」

今ならギリギリ間に合うということで、
夫は希望通りの入院生活をスタートさせた。

003.jpg

以前のように、不自由さをぼやくこともなく、
落ち着いて淡々と過ごしている。

私も淡々と夫に接するようにしている。
距離を置くことで、
私の心も身の周りも、整理整頓が進む。

良い年が迎えられそうだ。

プロフィール

小吉

Author:小吉
相棒の発症のおかげで、
加減して飲むことを学習。
依存症予備軍!?
猫舌の呑助です。。。。。

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