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呑兵衛夫婦の迷走人生を気まぐれに更新中。見解に偏りあり(!?)の読み流し物件。

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--年--月--日(--)  --:-- by 小吉
 ✤ 進歩
Posted on 31.2015
酒を飲むことで生きて来た半生だ。
飲んではいけない身体になっても、
夫は酒を手放せずに愚図愚図している。

当人は、身体を気遣って、
節酒しているつもりのようだが……。

少なく見積もっても、毎日欠かさず、
ウイスキーのポケット瓶1本は飲み干しているのだ。

調子が悪くなるのは、火を見るよりも明らかだった。

夜半、夫の部屋の方から大きな物音が……。
恐る恐る見に行くと、
ベッドから落ちた夫が床に転がって寝ていた。

別の夜は、トイレの方からドスンと響く音が……。
トイレのドアが全開で、
夫がうつぶせになって倒れていた。
起き上がろうと四つん這いになるも、力が入らず、
体を起こすことが出来ずに固まっていた。

「大丈夫?」と側に寄ると、
「見ないで。見ないで」と絞り出したような声で、
夫が私を追い払うので、その場から離れた。

パンツを下げずに便座に座ったようで……。
パンツをおろそうと立ち上がり、
ふら付いて倒れて、そのまま失禁したらしい。

酒が悪さしている。

この調子だと、奇行が再現される日も近い。
何があっても落ち着いて対応しよう。
私が取り乱さなければ、何とか乗り切れるはずだ。

心の準備を始めて数日が経った昼下がり、
夫が身体の痛みを静かに語り出した。

下痢と腹痛に襲われている。
その痛みは、今までのとは違う。

「いったい、どうしちゃったんだろう」と、
夫は苦痛で顔を歪めながら、不思議がっている。

酒を飲み続けた結果じゃないかと思ったが……。

「いったい、どうしちゃったんだろうね」と、
おうむ返しに答えるだけにした。

痛みへの不安が募る夫は、
酒を止めているように見受けられた。

飲み出したら止まらない病気だが、
酒を止められないわけではない。
飲まずにいることは可能なのだ。

酒を止めても痛みが鎮まらないことに
危機感を覚えた夫は、地元の総合病院を受診。
取り敢えずの痛みどめを処方してもらった。

「どうせ、治らない……」が口癖で、断酒を否定。
いつ死んでもいいような物言いだったのに……。

いざ、具合が悪くなると、生きることに執着。

まだ生きていたいのなら、
酒と縁を切る以外、道はないのになぁ。

院内の家族会で、夫の現状を吐き出すと、
精神保健福祉士が私の心を軽くしてくれた。

「どう頑張っても止められない時期があります。
 減らそうとしていることは、ちょっとの進歩です

「進歩」という響きが、とても新鮮でうれしかった。


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