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卒業

夫の入院中、院内の「アルコール家族会」に参加。
「家族の回復」がテーマだった。

病気の影響を受けて、
家族もストレスの高い状態になっている。

家族が回復していくためには、
「彼は彼、自分は自分」と切り離して、
自分の時間、自分の考え、自分の選択を
取り戻すことが必要との事だった。

講師の精神保健福祉士が、
しなくていいことを簡潔にまとめてくれた。

① 依存症者の飲酒の理由に対応しなくていい

② 依存症者の飲酒を直接止めさせようとしなくていい

③ 飲酒問題の処理(後始末)をしなくていい

④ 飲んだかどうかに集中しなくていい

⑤ 依存症者を脅かさない、駆け引きをしない

学んだことが、実践できていない。。。。。
特に、④が難しい。

退院直後の再飲酒なので、
どのくらい飲んでいるのか気になり、
知りたくて我慢できない。

気になって仕方ないのに、
気にしない振りは精神衛生上よろしくない。
かえって、ストレスになる。

屁理屈を並べて、自分の行為を正当化し、
夫の留守に、夫が隠した焼酎の紙パックを取り出す。

そして、それを揺らしながら、減り具合を確認。
飲酒量は、日毎に増えている。

飲み出したら止まらない病気なのだから、
ある意味、順調な経過だ。

ということは、
近いうちに、夫の奇行は繰り返されることに……。
良くない想像が膨れ上がり、心が乱れる。

区役所のロビーには、種々のパンフレットが
ラックに収まっていた。
そこで、見つけたチラシを握りしめ、すがる思いで、
『依存問題を抱えている家族の会』を訪ねた。

夫の酒を探し出さずにはいられないという愚行も、
ここでは、批判されることなく受け入れてくれる。

「みんな、同じことをやって来ましたよ」

否定されないことが、とても有り難い。
自分を責めなくてすむ。

「大丈夫、必ず、良くなりますよ」
「あなたのご主人なら、断酒できますよ」
「本当に、奇跡は起こるんです!!」

皆さん、大変な修羅場を経験しているのに、
明るく前向きだ。
諦めなければ、道は開けると言う。

実際に、メンバーの大半は、
夫や子どもの回復が実現していて、
良い関係を築いている。
うらやましい限りなのだ。

「ご主人の飲酒には、ノータッチで通しましょう。
 今は、自分が楽しく生きることを第一に考えてね。
 私たちは、あなたの仲間です。
 また、必ず、会いましょう。 待っていますよ」

先を行く方々の言葉は、心に静かにしみわたる。
酒を探す女から卒業しようと思う。

先例

退院後の夫は、精力的にAA会場に通っていた。
でも、酒を断ってはいない。
帰路、酒を仕入れて、酒と一緒に戻って来るのだ。

断酒への本気さが感じられない。。。。。。

断酒会の方が相談員をしている酒害相談会で、
隠れ酒している夫への不信感を訴えた時、

「自助グループに繋がっていれば、
 いつか、酒と縁を切りたくなる日が訪れます。
 だから、飲んでいてもいなくても、
 断酒の会に通い続けることに、価値があるのです」

飲酒しながらAAに通うなんて、おかしい。
酒を止めた人が止め続けるために、AAに参加している。
私には、そんなふうに思い込んでいるところがあった。

「回復の仕方は、人それぞれです。
 すぐ断酒できる人もいるし、再飲酒を繰り返す人も…。
 でも、会を離れなければ、必ず、断酒へと繋がります」

依存症からの回復者の声に後押しされて、
私は、夫の現状を見守る落ち着きを得たのだが……。

最近は、また、心が揺らいでいる。

あんなに熱心に通っていたAAへの足が遠のき、
夫は、ほとんど家で過ごしているのだ。

朝になると、朝食の気配で起きては来るものの、
目を閉じたまま、食べ物を口に入れている。
昨夜の酒が、体中に回っているのだろうか。
そのうつろな姿が、私を憂鬱にさせる。

食べ終わると、無言で自室に引き返し、
布団に潜り込んで静かに寝ている。

そして、昼食の気配で、また起き出して来るのだ。

こうして、3度の食事は必ず取り、薬の服用も忘れない。
ある意味、規則正しい生活だ。
酒さえ飲まなければ、身体は回復へと向かうのに……。

酒量の増加が、体調を悪くさせているのだろう。
ベッドでうつらうつらしている。
今の所、静かな病人だ。

どうせ、断酒なんて出来っこない。
AAも助けにならないと、
早急に結論付けてしまったのかもしれない。

夫は、ひとり、苦しみの中に沈んでいる。
私の存在は助けにならない。。。。。。

心がざわつくと、私はアルコール関連の本を開く。
そして、マーカーだらけの紙面を見返す。

「アルコール依存症という病気を何とかできるのは、
 断酒する気になった本人だけなのです。
 本人が断酒する気持ちになる以外に、
 病気の解決は不可能です


私に、夫の飲酒を何とかできる力は無い。
下手な手出し口出しは、事態を悪化させるだけ。

AAに行ってほしい。
寝てばかりいないでほしい。
いい加減、酒をやめてほしい。
私たちの将来を考えてほしい。

夫への注文が次々に浮かんで来て、
夫を非難したい気持ちが膨れて来て、
意地悪な心に傾いている時、
私は、自分自身を何とかするために、
家族会や自助会に顔を出すようにしている。

アルコール依存症者を抱える家族の話は、
私の知りたいことでいっぱいだ。
回復している人の家族の話は、良き先例となる。

いつか、きっと、
夫との穏やかな暮らしができるようになり、
今のこの苦しみにも、必ず終わりが来る。
いつか、きっと、願いは叶う。

先例に、希望をもらっている。
プロフィール

小吉

Author:小吉
相棒の発症のおかげで、
加減して飲むことを学習。
依存症予備軍!?
猫舌の呑助です。。。。。

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