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予定表

「俺は病気だ」
自覚があるような、ないような。

夫は、家で寝たり起きたりで、
時々、こっそり酒の買い足しに出る以外は、
何もしていない。

退院して、2か月が過ぎた。
身体は確実に、もとの酔っ払いに戻っている。

夢も希望もない。。。。。

会社からは「休職通知書」が郵送されて来た。
休職期間は、12か月と明記され、
期間満了日までに復職できなければ、
自然退職となるそうだ。

着々と失業への道を歩んでいる。

「病気だから、働けない。。。。」

確かに、今の状態では仕事は無理だ。
病気を治すことが先決だ。

「病気なら、病院へ行こうよ」

「行かない。 行っても治らない」

いつも、ここで、会話が途切れる。
夫の心は、変わらない。。。。。。

自分が回復するなんて、有り得ない。
自分の力を信じられないのだ。

夫は、自分の不幸に酔っている。
酒だけが心の友と思い込んでいる。

それで、夫がいいのなら、私の出る幕はない。

私が考えなくてはならないのは、
夫の「これから」ではなく、私の「これから」だ。

私が、どうしたいのか、どうなりたいのか。
方向性は、ぼんやりだが、見えている。

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ラスト・クリスマス&ラスト・ニューイヤー。
二人で過ごすのは、恐らく最後だろう。

心の予定表に記した。
身の引き締まる思いだ。

序章

いざとなると、尻込みしてしまう。
ぐずぐずと煮え切らない態度は、昔から変わらない。

夫も私も、ひとりで生きて行く。
環境を変えることで、良い変化があるかもしれない。
娘も息子も、私が別居することに異論はない。

「ママがいるから、パパは甘えてしまって、
 酒の世界に浸っていられるんだよ」

突き放すことが夫への助けになるという、
正論に突き動かされ……。
家の中は、すっきりと片付いたが、
心の中は、まだ、ごちゃごちゃしている。

そんな折、
マイルの有効期限が迫っているから…と、
娘から、旅の誘いを受けた。

まだ、飛行機に乗ったことがない私の
飛行機搭乗デビューが約束された。

母と娘の二人旅だ。

ひどい下痢と両ひざの激痛で歩行困難な夫は、
もちろん、留守番だ。

病人を家にひとり残して、
旅行に出るのは、気が引ける。

それを夫に伝えるのは、さらに、気が重い。
娘もタイミングがつかめず、
まだ、父親に旅の話をしていないのだ。
言い出せなくて、旅は数日後に迫っている。
黙って行ってしまおうか。。。。。

突然、私のいない生活を体験すれば、
夫に、何か気付きがあるかもしれない。

でも……。

身の回りの世話をする者がいなければ、
夫が困って不自由するのは、目に見えてわかる。
私のやろうとしていることは、
わがままな病人への嫌がらせに過ぎないのでは……。

たかが、二泊三日の旅で思い煩っている始末。
別居への道のりは遠いなぁ。

現実

口は禍のもとだ。
私には、まだまだ我慢が足りない。
病人相手に感情的になってしまうのは良くない。

娘に連れられて、大阪・京都を旅し、
夫から解放されて、夢のようなひと時を過ごした。

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清水寺3

帰宅して、現実に引き戻された。
2泊3日の留守中、
過剰な飲酒が繰り返されていたようだ。

洗濯機の近くに山積みされたパンツは、
どれも汚物付きで、悪臭が漂っていた。

着替えのパンツや寝間着は底をつき、
夫は、夏用のパジャマをだらしなく着用していた。
何とも哀れな姿だが、口だけは達者で、
注文の多い暴君振りは健在だった。

旅の楽しさが一気に吹き飛んでしまい……。

小間使いのように私を呼び立てる夫に対して、
腹立たしさを覚えて、嫌味を並べてしまった。

病人の暴走する言動に、まともに乗って、
ののしり合いが止まらない。。。。。。

アルコール漬けの夫は挑戦的で、
鬼のような形相だった。

「あぁ~あ、帰って来るんじゃなかった!」

「だったら、出て行け!!」

「催促されなくても、
 時期が来たら、ちゃんと出て行きますから……」

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娘が清水寺で買い求めた父へのお土産を
私が預かり、持ち帰った。
音羽の滝の霊水は、延命長寿水、諸願成就水だ。

「ご利益のある水だから、
 パパに飲んで欲しいって、言ってましたよ」

夫は、その容器をちらりと見ただけで、
手に取ることもなく、自室へと引き返し……。
その扉を強く閉める音が私の耳に突き刺さった。

京都の寺や神社を回り、
娘とふたり、父親の回復、夫の回復を
どんだけ、願掛けしたかも、ご存じなく……。

夫は、酒だけを抱えて、
酒だけを頼りに生きている。

夫はそういう生き方しか出来ないのだ。
そう思うことで、私は平静を装っている。

おみくじは、正直だ。
私の運は、凶だった。

大吉を引いた娘が、
2枚合わせて、一緒に結んでくれた。

「大丈夫。 足して2で割れば、
 丁度いい『運』になるからネ」


夫の今までの大量飲酒を思えば、
これから先、一滴も飲まないことで、
丁度いいのになぁ~。

願いは伝わらない.。。。。。。。
プロフィール

小吉

Author:小吉
相棒の発症のおかげで、
加減して飲むことを学習。
依存症予備軍!?
猫舌の呑助です。。。。。

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