酒のつまみばかりが並ぶ晩御飯だった。
飲んでいた頃は、日が暮れると、
「今日も、一日、お疲れさん!!」で、
晩酌優先のメニューしか、思い浮かばなかったのだ。
酒が入ると、だらだらと、食べ続け、飲み続け……。
そして、気が大きくなり、横柄にもなる。
あげく、夫のひと言に執拗にこだわり、絡む。
結果、夫の逆鱗に触れてしまうことも多々。

あの時も、口が減らない私に、夫の怒りが爆発して……。
私は、触れてはならないことを吐き捨ててしまったのだ。
父親を嫌悪していた夫に対して、
「おとうさんにそっくりじゃん!!」
夫は鬼のような形相で、私の胸ぐらをつかむと、
「何で、そんなこと言うんだ! 何で!! 何で!!!」
と、私の体を前後にぶんぶん揺すり続けた。
ただならぬ気配に、隣室にいた娘が飛んで来て……。
「やめて、やめて!! ママが死んじゃう!!」
まだ10歳にもならない娘の叫び声で、
夫は、私の服から手を放したのだ。
小さな娘に大きな不安を与えても、
酔っ払った親は、呑気なものだ。
「ママ、大丈夫?」と、気遣う娘に、
「お気に入りのセーターだったのに……。
パパがぶんぶん引っ張るから、こんなに伸びちゃって……。
もう、着れないよぉ~~~」
私は服の心配をしていたのだから、どうしようもない。
だいたい、なんで、喧嘩になったのかもよく分らない。
酒がいけないのだ。
お互い、飲み過ぎなのだ。
愚かな親の仲裁に入らなければならなかった娘を思うと、
本当に申し訳なくて……。
こういう環境が、子どもにとって、いいわけがない。
にも関わらず、
親よりマシに育ってくれたのが、救いだ。
社会人になった娘は、
料理教室へ通ったり、料理本を買い揃えて、
自分の味を作り出している。
家に来た時は、新作を披露してくれる。
夫は、ご機嫌だ。
食が細くなってしまった夫の御飯が進む。
娘は良い妻、そして、良い母になるだろう。
相変わらず、夫の隠れ飲酒は続いている。
でも、私は素知らぬ顔をして、
娘のレシピを頼りに、御飯のおかずを作っている。
素知らぬ振りは、
見放したようにも見捨てたようにもうつるから、
心苦しくなる時がある。
が、心を鬼にして、
淡々と接するようにしている。
いつまでも、負の風に晒されている夫じゃないはず。
いつか、きっと、風向きは変わると、信じたい。
飲んでいた頃は、日が暮れると、
「今日も、一日、お疲れさん!!」で、
晩酌優先のメニューしか、思い浮かばなかったのだ。
酒が入ると、だらだらと、食べ続け、飲み続け……。
そして、気が大きくなり、横柄にもなる。
あげく、夫のひと言に執拗にこだわり、絡む。
結果、夫の逆鱗に触れてしまうことも多々。

あの時も、口が減らない私に、夫の怒りが爆発して……。
私は、触れてはならないことを吐き捨ててしまったのだ。
父親を嫌悪していた夫に対して、
「おとうさんにそっくりじゃん!!」
夫は鬼のような形相で、私の胸ぐらをつかむと、
「何で、そんなこと言うんだ! 何で!! 何で!!!」
と、私の体を前後にぶんぶん揺すり続けた。
ただならぬ気配に、隣室にいた娘が飛んで来て……。
「やめて、やめて!! ママが死んじゃう!!」
まだ10歳にもならない娘の叫び声で、
夫は、私の服から手を放したのだ。
小さな娘に大きな不安を与えても、
酔っ払った親は、呑気なものだ。
「ママ、大丈夫?」と、気遣う娘に、
「お気に入りのセーターだったのに……。
パパがぶんぶん引っ張るから、こんなに伸びちゃって……。
もう、着れないよぉ~~~」
私は服の心配をしていたのだから、どうしようもない。
だいたい、なんで、喧嘩になったのかもよく分らない。
酒がいけないのだ。
お互い、飲み過ぎなのだ。
愚かな親の仲裁に入らなければならなかった娘を思うと、
本当に申し訳なくて……。
こういう環境が、子どもにとって、いいわけがない。
にも関わらず、
親よりマシに育ってくれたのが、救いだ。
社会人になった娘は、
料理教室へ通ったり、料理本を買い揃えて、
自分の味を作り出している。
家に来た時は、新作を披露してくれる。
夫は、ご機嫌だ。
食が細くなってしまった夫の御飯が進む。
娘は良い妻、そして、良い母になるだろう。
相変わらず、夫の隠れ飲酒は続いている。
でも、私は素知らぬ顔をして、
娘のレシピを頼りに、御飯のおかずを作っている。
素知らぬ振りは、
見放したようにも見捨てたようにもうつるから、
心苦しくなる時がある。
が、心を鬼にして、
淡々と接するようにしている。
いつまでも、負の風に晒されている夫じゃないはず。
いつか、きっと、風向きは変わると、信じたい。